春夏通じての甲子園初出場でベスト8。被災地・熊本の希望を背負った快進撃は、いかにして成し遂げられたのか
大阪湾から届く浜風が、いつものようにライトからレフト方向へと吹いていた。カクテル光線に包まれた甲子園球場が、名残惜しそうにチームを見送っているようだった。
「胸を張って帰ってね」
温かな風に運ばれるスタンドからの声が全身を伝う。
初出場にしてベスト8。
この夏、鮮烈な戦いで甲子園を沸かせた有明高校を率いた監督の高見一茂は、スタンドの声援に頭を下げながらも唇を噛んでいた。
「甲子園の景色は、4試合すべてが素晴らしいものでした。ただ、やっぱり勝ちたかったです」
今年の「熊本代表」は例年以上に特別な存在であり、日本中から注目されることがわかっていた。
有明が初めての甲子園出場を決めてから4日後の7月28日。最大震度7の大地震が熊本を襲った。ひと月経った時点で死者は38名、住宅被害は4万棟近く。電気・水道などのライフラインが寸断されるなど、県中部を中心に甚大な被害をもたらした。県北部に位置する荒尾市にある有明はほとんど影響がなかったとはいえ、「熊本代表」である以上は、報道陣をはじめとする世間から震災と関連付けられる宿命にあった。
だからこそ高見は、チームに足元を見つめさせる必要があった。大会直前にあるべき姿を選手に示した。
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