夏です。甲子園の季節です。準々決勝で、智弁和歌山に敗れた仙台育英。大量リードされ迎えた9回2アウト。そこから3年生がヒットで出塁。そして、代打で起用された甲子園初打席の3年生がフェンス直撃の二塁打で1点を奪う。さらに3年生もヒットで続いてもう1点。須江航監督が認めるように1、2年生が中心の仙台育英で最後に3年生が見せた意地。ベンチのチームメイトたちが代打の2ベースに泣いていました。試合後のクールダウンもよかった。ピッチャーとキャッチャーが、これが最後のクールダウンと噛みしめながら、キャッチボールを終えた瞬間に抱き合って涙。いやー、泣けましたね。
さて、今大会、注目していたのは岩手代表の花巻東でした。言わずと知れた菊池雄星、大谷翔平の母校です。9月号ではノンフィクションライターの中村計さんが、佐々木洋監督にインタビューしています。この企画がスタートしたのは4月末のことでした。菊池、大谷を育てた佐々木監督が「甲子園を目指す? なんて小さな目標だ」と言っている。そして、ドイツやフランスからも選手を受け入れている。そこで佐々木監督の考えを聞いてみたいというのが、中村計さんの担当編集者から上がってきたプランでした。

最近、メディアの取材は断っているという佐々木監督が、このテーマならと受けてくださり、上がってきたインタビュー。めちゃくちゃ刺さりました。いや、刺さり過ぎて、痛かった。単なる野球論を越え、管理職(監督)としてどう人を育てていくか、組織論、社会論ひいては日本論にもなっています。読みながら感じたのは「この空気、誰かに似ている」。それは、私がかつて取材した元・下北沢成徳高校バレーボール部監督の小川良樹さん。女子全日本代表の大山加奈、荒木絵里香、木村沙織らが卒業生であり、現・全日本キャプテンの石川真佑も教え子です。
どこが似ているのか。佐々木監督はインタビューでこう言っています。「雄星と大谷は『自分が育てた』とは、恐ろしくてとても言えません」。小川先生もよく「沙織は私が育てたんじゃない。勝手に育った」とおっしゃっていました。もう一つ、スカウトの際、佐々木監督は「日本一になるとか、甲子園に出ることが夢なら、うちじゃないほうがいいかもしれない。でも、アメリカへ行きたいなら、うちへおいで」と言ったことがあるそうです。一方、小川先生も「春高バレーで優勝したいなら、成徳じゃないほうがいいかもしれない。でも、オリンピックに行きたいなら、うちがいいんじゃないか」と言っていました。
今、中学球児が行きたい高校が、花巻東や仙台育英になっているそうです。甲子園だけでなく、その先を見据えている球児たちにとっては、佐々木監督や須江監督の指導や言葉が響くのでしょう。

それにしても、佐々木監督に感心させられるのは、あれだけ選手を育ててもカリスマ然とするのではなく、学び続ける姿勢です。雄星の時代は、甲子園の後の国体で、ほかの高校生が髪を伸ばし始める中、「うちは全力で勝ちに行く」と五厘刈りにさせていたという佐々木監督が、8年前から頭髪を自由にした。たまたまウガンダで野球をやる子どもたちをテレビで見て心を動かされ、自費でウガンダに行く。今、ウガンダから選手を連れてこようと考えているそうです。
佐々木監督はこう言います。いずれ、今以上に日本のアマチュア選手が海外に行くようになる。その時、花巻東はルールではなく、魅力で世界中から選手をとりたい。
年額プランがおトク!月あたり900円で全記事読み放題
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
オススメ!
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 電子版オリジナル

