大谷翔平の正しい思考法

スポーツの光と影

佐々木 洋 花巻東高等学校硬式野球部監督
エンタメ スポーツ
佐々木洋監督 ©文藝春秋

 私の趣味は盆栽なのですが、実に奥が深い世界です。一流の作家さんは、芽が出たその時から針金を掛け、枝の曲線や伸長の方向を美しく整え、作品を作り上げる。その器が大きければ大きく育ち、小さい器ではそれなりの成長しか見せない。

 野球の指導も同じように感じることも少なくありません。何かあるたびに「教育や野球に活かせることはないか」と考えてしまう私は、盆栽からもヒントをもらい試行錯誤を繰り返してきました。指導者にできることといえば、選手自身が成長するための環境作り、「意識と意欲」を変えてあげることくらいなのです。

 高校入学当時、メジャー挑戦すら考えていなかった大谷翔平が、いかにしてメジャーでMVPまで獲る選手になったのか。指針となったのは、3学年先輩の菊池雄星です。

 1年生から甲子園で活躍するほどの実力の持ち主だった雄星は、卒業後、日本のプロ野球を経由せず、直接メジャーに挑戦しようと考えていました。ところが、想像していた以上に世間の風当たりが強かった。ドラフト会議4日前の記者会見で、日本のプロ野球を選んだ彼の涙は忘れません。その悔しさと申し訳なさから、大谷にはいつも「挑戦したいなら迷うな」と伝えてきました。

 当時、花巻東にはメジャーのスカウトがグラウンドに足を運んでいたし、私も雄星の経験を聞かせた。メジャーを身近に感じ、「メジャーの器」で練習する。そうして大谷の意識もレベルも変わっていきました。

 指導をする上で私は、言葉の力を信じています。「人生が夢を作るのではなく、夢が人生を作る」。目標を達成するには、漠然と思い浮かべるのではなく、言語化することで意識を高めなくてはいけない、と。

 言語化の取り組みの1つとして、選手たちには「目標達成シート」なるものを書かせています。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : エンタメ スポーツ