トヨタ副社長「章男会長とのケンカの真相をお話しします」

中嶋 裕樹 トヨタ自動車代表取締役副社長

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「もっと技術屋にチャレンジさせろ」と会長に言われます

(聞き手 井上久男)

 自動車産業は百年に一度の変革期にある。電動化・知能化といった技術革新の波が一気に押し寄せているからだ。そのため各自動車メーカーでは莫大な研究開発費用を必死に捻出している。世界販売首位の座を堅持しているトヨタ自動車も例外ではない。研究開発投資額は年々増え続け、2027年3月期には1兆6000億円にまで膨らむ見通しだ。こうした中、研究開発部門を率いる中嶋裕樹副社長兼最高技術責任者(CTO)に、電気自動車(EV)や自動運転車の開発戦略、開発部門が抱える課題について聞いた。


 ──トヨタは「脱炭素」を推進するうえでEVに固執せず、幅広い動力源を選択肢とする「マルチパスウェイ」を重視しています。一方で2021年には、2030年までにEV販売350万台を目指す計画を打ち出しました。しかし、米国では当初の想定に比べてEV市場が伸びていません。今後の目標に変化はあるのでしょうか。

 中嶋 開発の視点においてEVは視野のど真ん中に置いていますし、具体的なプロジェクトも素早く進めています。しかし、マーケットの状況は様々な理由で日々変動します。たとえば米国で政権が変われば、二酸化炭素排出の規制が変わり、それに伴いEVの需要も落ちました。その現実に対応する必要があります。

 トヨタには「基準台数」という考え方があります。その台数を生産するために、どれくらいの部品や材料、工数を用意しなければいけないか、どのぐらいの投資が必要なのか、常にシミュレーションしています。協力企業や仕入れ先にも事前に基準台数を示しておかないと準備できません。

 そうした予測を繰り返しているので、正直なところ、当時掲げた350万台に届くとは考えていません。しかし、また何らかのきっかけで伸び幅がグッと上がるかもしれない。ですから、複数の基準台数を想定して対処しています。要は、経営環境の変化に合わせられるように、複数のシナリオを用意しているのです。

インタビューにこたえる中嶋副社長 ©文藝春秋

 ──自動運転も含めたSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル=ソフトウェアを変更することで価値や機能をアップデートできる車)の開発にも力を入れますか。

 中嶋 もちろん、これも開発のど真ん中です。研究開発投資の中で最もウェイトが高いのは、AIへの投資も含めた自動運転関連で、それは通信などインフラ側との協調など、対応すべき領域が広いからです。

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source : 文藝春秋 2026年10月号

genre : ビジネス 企業 テクノロジー