今もファンを魅了し続ける作家・白洲正子(しらすまさこ)(1910―1998)は、亡くなる直前、月刊「文藝春秋」で「男の品定め」と題して、夫の白洲次郎から、小林秀雄、吉田茂まで、関わりの深かった“いい男たち”について語っている。長女の牧山桂子(まきやまかつらこ)氏が明かす、知られざる母の素顔とは。
小林秀雄さん、青山二郎さん、多田富雄先生……みなさんよく鶴川の家に遊びにいらっしゃったので、私もよくお話をさせてもらいました。母は自分を持っている人、何かに夢中になっている人が好きだったんでしょうね。

そもそも本人が自分の世界だけに生きているような人でした。子どもたちにはまったく無関心。料理や家事はお手伝いさんに任せて、自分は書斎にこもって、ひたすら本を読んだり、原稿を書いたりしている。食事のときだけ出てきて、ひとしきり話をしたら、また、ふいにどこかへ行ってしまう。
だから、普通のお母さんのようなことをしてもらった記憶はほとんどありません。父のほうが竹とんぼを作ってくれたり、いっしょにスキーに行ったり、まだ親らしいことをしてくれました。
ただ、ときどき「こんな本を読んだら」と言ってくることがあって、本を読む癖が付いたのは母のおかげだったと思います。
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source : 文藝春秋 2018年1月号

