
“哲学界のロックスター”が渋沢栄一に注目する理由
経済学者・成田悠輔氏がゲストと「聞かれちゃいけない話」をする対談連載。第15回目のゲストは、マルクス・ガブリエルさんです。
※この対談のノーカット版は後日、「文藝春秋PLUS」で公開予定です
■Markus Gabriel 1980年ドイツ生まれ。哲学者。ボン大学哲学科正教授に史上最年少の29歳で就任。著書に『倫理資本主義の時代』『なぜ世界は存在しないのか』など
成田 こんな時代に哲学なんて無力で呑気すぎるのではないか? その疑問について最初に伺いたいです。戦争、エネルギー危機、気候変動――いま世界を襲っている問題は、国家や人類の生死に関わる目の前の暴力的危機です。緊急危機対応に追われる人類に、哲学は何の意味や利益を与えてくれるでしょうか。
ガブリエル 私は今の時代を「入れ子構造の危機(nested crises)」の時代と呼んでいます。戦争もエネルギー危機も気候変動も個々の危機が互いに影響し合い、増幅し合って悪循環を形成しているからです。20世紀までの危機はもっと直線的で、同じ戦争にしても比較的はっきりした対立構造がありました。
成田 これが原因でこの危機が起きた、といった一本の直線では完結しない時代ということですね。

ガブリエル そうです。ところが多くの政治家は、未だに危機を直線的に捉える誤りを犯しています。実際、アメリカがイラン攻撃を決めたとき、政策担当者たちは、それがかくも世界経済に影響を及ぼすとは予測できなかったわけです。
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source : 文藝春秋 2026年9月号

