成果を生むAI実装、二つの条件

新連載 第2回

伊藤 錬 Sakana AI 共同創業者・代表取締役社長

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ビジネス 社会 テクノロジー

「いいかい、レン。大事なのはツールじゃなくて、“ロール”であることなんだ」

 ランチを楽しむ客で賑わうロンドン市内のレストランで、目の前に座る大柄な男性が、分厚いステーキを頬ばりながら身を乗り出すように語りました。

 大きな目をさらに大きく見開いて、熱っぽく語るのは、ビジネス特化型SNSサービス「LinkedIn」の共同創業者であるリード・ホフマン。ホフマンは起業家、投資家として著名なだけでなく、シリコンバレーでも技術とその未来についての深い洞察で知られています。私は、昨年、パリでのAIサミットの際にホフマンと一緒に登壇して、AIがどこに向かって進化しているのか、そこに足りないものは何か、AI時代における労働の未来とは何かなどのテーマで議論しました。以来、定期的に食事をご一緒して、AIの未来や私の仕事についてアドバイスをいただいています。

 この日、私が「今後、金融機関と一緒に融資業務を支えるAIを作ろうとしているんだよ」と伝えると、ホフマンから返ってきたのが冒頭の言葉でした。彼はこの日、2時間にわたり、ずっと「ロール」について強調していました。

「ソフトウェアをツールとして渡し、『どうぞお使いください』ではダメだ。銀行の外に置くのではなく、あくまで銀行の業務の中に入れる。支店長がいて、融資担当者がいて、その人たちと並ぶようにAIを入れなければならない。AIにロール(役割)を与えるんだ」

 彼のような最先端のITトップが、なぜしつこいほどに「ロール」について熱弁を振るうのか。それは彼自身がAIのビジネス実装がいかに難しいかを、身を以て知っているからです。彼はIT経営者であると同時に、オープンAIの初期投資家の一人でもあります。

リード・ホフマン氏 ©時事通信社

MIT「95%」レポートの衝撃

 みなさんは2025年7月にマサチューセッツ工科大学(MIT)が発表したAIのビジネス実装についての調査結果をご存じでしょうか。「The GenAI Divide : STATE OF AI IN BUSINESS 2025」(「生成AIの分断:ビジネスにおけるAIの現状 2025」)という題名のレポートで、第1回でも少し触れましたが、世界中のさまざまな企業で行われている300件以上のAI導入プロジェクトの実態を調べたものです。

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source : 文藝春秋 2026年11月号

genre : ビジネス 社会 テクノロジー