『アフリカから来たランナーたち』(文春新書)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した泉秀一氏が、ケニア人ランナーたちを陰で支えた丸川正人(1950~)について綴る。

箱根駅伝、全国高校駅伝、ニューイヤー駅伝。テレビの前で誰もが目にするケニア人ランナーの快走を、私たちは当たり前の光景として受け止めている。しかし、その裏側でアフリカの若者たちを極東の駅伝大国につなぐ日本人の存在はほとんど知られていない。丸川正人。2026年、76歳になる彼は、半世紀前にケニアの土を踏んで以来、自らが学生時代に描いてきた理想を実現しようと試みてきた男である。
1950年生まれの丸川は、京都大学在学中に全共闘運動にのめり込んだ。マルクス主義に傾倒し「革命で権力を打倒する」という理想を信じていた。しかし、革命は成らず、運動が沈静化すると、関心は海外に向き世界を巡る旅に出た。大学卒業後、就職をせずに目指した先がケニアだった。それまでアフリカの地を踏んだことはなかったが、世界の貧困もまた、国家権力と同等に打倒するに値するテーマと映った。「ケニアがあるリフトバレー地域は人類発祥の地でもある。人類の起源にロマンを感じたのもあります」(丸川)。
しかし、1人の若者が現地を訪れたとて貧困を前になす術はない。かといって安定した職に就く気にもなれず、アルバイトと放浪を繰り返した。最初にケニアを訪れてから実に8年、丸川は目的を見失ったまま漂流していた。
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