藤井さんの強さは想像を超えていたということでしょうか、という問いに、渡辺明はこう答えた。「『想像どおり』とも言えるし、『想像以上』とも言える」。“現役最強”棋士が見た、藤井聡太棋聖の強さの根源。（取材・構成　内田晶）

渡辺氏

指してみないと強さが分からない

　――藤井さんの存在や将棋を初めて知ったのはいつですか。

　渡辺　彼が10歳で奨励会に入会したときに関東でも、愛知に強い子がいるって話題になっていました。小学6年生で詰将棋解答選手権を初優勝したときには、すごさが全国に知れ渡っていた。ただ、将棋を見たのはプロになってからですね。

　――やはり他の棋士とは違う印象を受けたのでしょうか。

　渡辺　実は、棋譜を見ただけでは、強いかどうかはよく分かりません。どういう局面でじっくり読みを入れるのか、また読みのスピードなどは、実際の対局で将棋盤を挟んで、息遣いを感じてみないことには、本質が分からないんです。

藤井聡太棋聖

　――藤井さんは、史上最年少記録を更新して14歳2カ月でプロ棋士になり、デビューから29連勝で世間を賑わせました。

　渡辺　さすがに「普通じゃない」っていう感じでしたね。その時点で「羽生さん（善治九段）クラスの棋士になる可能性が高い」という評価が出てくるのも当然でしょう。ただ、自分自身が指してみないことには強さが分からないものなんですよ。

　――藤井さんとの初対局は、2019年2月16日に行われた第12回朝日杯将棋オープン戦の決勝でした。

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