4大大会連覇&世界ランク1位。なぜ彼女は新女王になれたのか?
南半球で開催される唯一のグランドスラムで、歴史的な決勝戦が幕を下ろした。スタンドの照明を落とし、幻想的に照らし出された表彰台。アジアテニス史上“過去”最高のプレーヤー、李娜(リーナ)から優勝トロフィーが受け渡されると、大坂なおみはその祝福をぎこちなく受けた。
「彼女にここで会えることを知らなかったから、すごくびっくりしました。少し泣きそうになっちゃったけど、表彰台の上では泣きたくなかったんです。でも本当に感動したことは事実で、彼女からトロフィーを渡されたことは本当に光栄でした」
そんな感激を抱いていたようには見えなかった。アメリカ人なら、ヨーロッパ人なら、もっとうまく、大げさなくらいに感情を表現しただろう。大坂はいつものように小さくお辞儀をし、受け取ったトロフィーを高く掲げることも忘れ、優勝スピーチはあいかわらず子供っぽくたどたどしいまま、世界の頂点に上り詰めた。李娜が31歳のときに達成した2度目のグランドスラム優勝を、わずか21歳で手に入れ、李娜が達したアジア選手史上最高の世界ランク2位を追い越したのだ。
コンピュータ・ランキング・システムが導入された1975年以来、26人目の女王(世界ランキング1位)となる。21歳3カ月という年齢は、若さでいえばその中で11番目にすぎないが、大坂の衝撃は殻を破ってからのスピードである。昨年の全豪オープン開幕時のランキングは72位だった。
「私にしてみれば、けっこう時間がかかったなって感じです。グランドスラムの2週目(ベスト16以上)にはいきたくてもなかなかいけなかった。多分、私の時間はあなたたちよりゆっくり進んでるのね」
大坂自身はそう言ったが、初の世界1位獲得の1年前に20位以下だった選手は過去1人もいない。
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source : 文藝春秋 2019年3月号