世界一忙しいホワイトハウスの「司令塔」が本誌に登場!(取材・構成=大野和基)
全米50州の感染症対策の先頭
大統領首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏(80)は、ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策チームの「顔」だ。
昨年はトランプ前大統領と意見を異にすることも多かったが、バイデン政権では、大統領とタッグを組み、米国の感染対策を引っ張っている。最近は、デルタ株の感染拡大を受け、CDC(米国疾病対策センター)と連携を取りつつ、マスク指針の見直し、ブースター接種の開始など新しい方針を打ち出してきた。
1984年以来、国立アレルギー感染症研究所所長でもあり、HIVやエボラ出血熱などあらゆる感染症に関して、半世紀以上にわたり全米50州の対策の先頭に立ち続けてきた人物だ。
バイデン大統領とファウチ氏(右)
――今日は、貴重なインタビューの機会を与えていただき、ありがとうございます。
ファウチ どういたしまして。こちらこそ、日本の皆さんのためにお話ができることを光栄に思います。
――まずこのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の収束の見通しですが、どのような見解を持っていますか。人類は、インフルエンザと同じように永久にこのウイルスと共生することもあり得るのでしょうか。
ファウチ 今この時点では、それについては本当に不透明です。というのも一つには、このウイルスに対する非常に有効なワクチンを手にしているからです。
もちろん、ワクチンがあるだけでは不十分で、天然痘やポリオや麻疹(はしか)に対して、これまで人類がやってきたように、一国一国ではなく全世界にワクチンを普及させるグローバル・ヘルスの取り組みがこれから必要になってきます。麻疹はアメリカでは排除することに成功していますが、日本でも「排除」状態にあることが認定されていますね。そのウイルス排除を全世界に広げるのです。
ですから、それと同じように世界各国で人口の圧倒的な割合にワクチンを接種すれば、必ずしも永久に新型コロナと共生しなければならないという状況になるとは限りません。ですから、麻疹などでやったようにワクチン接種を世界中に行き渡らせるプログラムを100%成功させることに人類の将来はかかっています。
オンライン取材で答えた
運命は我々の掌中にある
――なるほど。新型コロナウイルスには、新しい変異株が相次いで出現していますが、次にどのような悪性の変異種が出現するかを科学的に予測することはできないのでしょうか。
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source : 文藝春秋 2021年10月号