希望と絶望

今月買った本

橘 玲 作家
エンタメ 読書 SDGs

 人間の本性は「利他的(善)」なのに、「利己的(悪)」だと曲解されていると主張するのが『Humankind 希望の歴史』。これが「希望」なのは、すべてのひとが自らの善性に気づけば、それだけで社会はよくなるからだという。スタンフォード監獄実験など、定説とされた「性悪説」への批判は興味深いが、そんなうまい話があるのかとの疑問も湧く。

『目的に合わない進化』では、進化生物学者が、最新の知見を紹介しつつ、旧石器時代に数百万年かけてつくられた「人間の本性=脳の配線」が、現代の急速なテクノロジーの変化に適応できないことが、さまざまな社会問題の原因になっていると説く。こちらの主張にはあまり「希望」は感じられないが、納得感は高い。

 地球環境の持続可能性が懸念されるようになったことで、内外を問わず「資本主義批判」がにぎやかだが、『資本主義だけ残った』では、グローバルな格差問題を研究してきた経済学者が、世界には「リベラル能力資本主義」と「政治的資本主義」のふたつの経済制度以外は存在しないと冷静に論じる。前者は西欧、後者は中国が典型だが、両者は敵対するのではなく、いずれひとつに収斂していくのではないだろうか。

 地球温暖化については膨大な議論・論争があり、部外者はもはや理解が困難になっているが、『地球の未来のため僕が決断したこと』では、マイクロソフトの創業者がそんなわたしたちのために、ファクトに基づいてなにが重要なのかを明快に説明してくれる。ミッションは年間510億トンの温室効果ガスをゼロにすることで、原子力なしでそれを達成することは不可能だという。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
今だけ年額プラン50%OFF!

キャンペーン終了まで時間

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

オススメ! 期間限定

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

450円/月

定価10,800円のところ、
2025/1/6㊊正午まで初年度5,400円
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2021年11月号

genre : エンタメ 読書 SDGs