人間の本性は「利他的(善)」なのに、「利己的(悪)」だと曲解されていると主張するのが『Humankind 希望の歴史』。これが「希望」なのは、すべてのひとが自らの善性に気づけば、それだけで社会はよくなるからだという。スタンフォード監獄実験など、定説とされた「性悪説」への批判は興味深いが、そんなうまい話があるのかとの疑問も湧く。
『目的に合わない進化』では、進化生物学者が、最新の知見を紹介しつつ、旧石器時代に数百万年かけてつくられた「人間の本性=脳の配線」が、現代の急速なテクノロジーの変化に適応できないことが、さまざまな社会問題の原因になっていると説く。こちらの主張にはあまり「希望」は感じられないが、納得感は高い。
地球環境の持続可能性が懸念されるようになったことで、内外を問わず「資本主義批判」がにぎやかだが、『資本主義だけ残った』では、グローバルな格差問題を研究してきた経済学者が、世界には「リベラル能力資本主義」と「政治的資本主義」のふたつの経済制度以外は存在しないと冷静に論じる。前者は西欧、後者は中国が典型だが、両者は敵対するのではなく、いずれひとつに収斂していくのではないだろうか。
地球温暖化については膨大な議論・論争があり、部外者はもはや理解が困難になっているが、『地球の未来のため僕が決断したこと』では、マイクロソフトの創業者がそんなわたしたちのために、ファクトに基づいてなにが重要なのかを明快に説明してくれる。ミッションは年間510億トンの温室効果ガスをゼロにすることで、原子力なしでそれを達成することは不可能だという。
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source : 文藝春秋 2021年11月号