にっぽんいち! つば九郎

巻頭随筆

ライフ スポーツ

 東京ヤクルトスワローズのマスコット、つば九郎です。

 原宿でスカウトされ入団、デビュー28年目になります。普段は平仮名による筆談なので、編集部に代筆してもらっています。

 ブレークは、8年目の2001年。その年に入団した、ラミレスがホームランを量産し、打った後のパフォーマンスで、志村けんさんのアイーンなどを一緒にやったんです。それが話題となり、ラミちゃんのおかげでつば九郎バブルがきた。今ではグッズ売上1位です。

 2021年の契約は年俸2万8000円、「ヤクルト1000」飲み放題。昨年まで「ヤクルト400」だったので、今年はさらに高い存在感を維持できたと思います。

 そして迎えた今シーズン。評論家のみなさんの下馬評を覆し、6年ぶりのセ・リーグ優勝と20年ぶりの日本一をつかみとりました!

 今季は、チームのムードが良く、目立ったけが人が出なかったことが大きかった。

 投打のMVPは、清水昇くんと村上宗隆くん。清水くんは中継ぎフル回転の大活躍で、プロ野球新記録となる50ホールド達成。タフとはいえ、今はゆっくり休んで、疲れをとって欲しい。若き四番、村上くんは、ホームラン王の活躍ぶりはもちろんのこと、試合中、積極的に声を出していた。頼もしい21歳です。

 村上くんとはLINE友達で打てなくて落ち込んでいそうな時はくだらない会話をするよう心がけています。コロナが落ち着いたら一緒にパトロール(飲食)行きたいな。

 ポストシーズンでも好投した、20歳の奥川恭伸くんは、つば九郎「さん」と、呼んでくれて、リスペクトを感じる。若手を“文春砲”から守るため、風紀委員として夜の街をパトロールするのも、つば九郎の大事な役目です。

 ベテランも心強かった。チーム野手最年長39歳の青木宣親くんは、メジャー七球団を渡り歩いた苦労人。若手に「ルーティンを大切にしろよ」と言い伝え、入念なストレッチを欠かしません。

 ちなみに、つば九郎の日課は、毎日、ブログを書いてお酒(ビールと焼酎が好き)を飲むこと。それから誘われた飲み会は断りません。

 セ・リーグ優勝のターニングポイントは9月でした。

 9月7日、首位・阪神との三連戦初戦でのこと。

「絶対大丈夫。どんなことがあっても僕らは崩れない!」

 試合前、高津臣吾監督の言葉でチームは一枚岩に!

 さらに、監督は9月13日の中日戦で、先頭にたって審判団に猛抗議して、チームの士気は爆あがり。翌日から球団記録の13試合負けなしで9連勝でした。

 監督は心優しい熱血漢。社会・芸能ニュースに明るいつば九郎はホーム試合で〈ひとさまの きんめだるを かんじゃう〉などと、炎上すれすれの筆談トークを披露する。監督から「つまらなかった」とダメ出しもあるので励みになります。

 優勝目前となった、10月24日の巨人戦は忘れられない日となりました。

 試合直前、日本シリーズMVPのムーチョ(中村悠平捕手)が声をかけてくれて、選手、コーチの円陣に加わった。つば九郎もチームの一員だというメッセージにじ~んときました。

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source : 文藝春秋 2022年1月号

genre : ライフ スポーツ