4度のグランドスラム優勝に、社会的な発信力。日本人の母とハイチ系アメリカ人の父を持つ大坂なおみ(24)は今や多様性の象徴と言える。フリーライターの内田暁氏が、7年前のインタビューを回想する。
「私のお母さんは、スピードスケートのトップ選手だったの」
そう聞かされて「そうなの!?」と驚くこちらの反応に、彼女は慌てて「ジョークよ、ジョーク!」と前言撤回した。日本のメディアから取材を受ける機会は、まだ少なかった時分だったろう。たどたどしい英語で質問するこちらの気持ちを、彼女は和まそうとしてくれているようだった。
その後も「ジョークよ」発言は幾度か飛び出すも、基本的にはこちらの真意を探り、自分の想いを的確に表す言葉を探しながら、真摯に質問に答えてくれたと記憶している。
特に印象に残ったのは、彼女が、セリーナ・ウィリアムズに憧れた理由を明かした時。インディアンウェルズという、人口の大半が白人の町で開催された大会での、ある有名な“事件”がきっかけだったという。
この大会の準決勝でセリーナは、姉のビーナスと対戦予定だった。だが試合直前で姉は棄権。それを「八百長」と感じたファンは、翌日の決勝戦で、セリーナにブーイングを浴びせ続けたのだ。
理不尽な悪意をはねのけ優勝したセリーナの姿に、幼い大坂は「なんて凄い人なんだろう!」と感激した。
「私も、対戦相手の友人や親から酷いことを言われ、悲しくなって負けたことがあったから」
大坂なおみ
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source : 文藝春秋 2022年1月号