岸田文雄首相は、国会冒頭の「施政方針演説」の中で、「厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される1年です」と語った。そして、「私自ら先頭に立ち、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し、『新時代リアリズム外交』を展開していきます」と続けた。
米中対立、国際秩序の揺らぎ、経済が武器化する地経学的闘争という激変する国際環境の中で、現実直視を心掛け「したたか」な外交を追求していくとの決意表明である。
外交上の最大の挑戦は米中対立である。
バイデンの米国は、トランプの米国の延長というよりむしろ表裏一体のようだ。同盟重視の旗を掲げながら、フランスに根回しもせずに英豪とAUKUSを突如、発表する。「中産階級のための外交」はその実、「アメリカ・ファースト」の別名のように聞こえる。CPTPPはもう終わったこととして退け、インド太平洋の「経済的枠組み」なるものを唱え始める。
一方、習近平の中国は、既存の国際秩序を自国の権益増進のために使い倒すことには関心を示すが、それに役立たないと見るとその機構を弱めるか、パラレルな機構をつくろうと仕掛ける。国際秩序・ルール形成においては、自国のガバナンス、つまりは「国情」を反映させることに傾注する。中国の「国情」に合わず、「国家安全」に添わないと判断したときは「例外扱い」を要求する。それに反対し、抵抗する国には「経済的威圧」で臨む。中国の究極的な関心は、自国の勢力圏を拡大することにある。
岸田政権にとって深刻なのは、米国の内政の混迷と外交の整合性のなさである。「中産階級のための外交」では中国の国家資本主義を弾劾し、中国の核・ミサイル増強に対してはAUKUSで一発かまし、民主主義サミットを開催し、自由陣営の盟主として気勢を上げる――といった風にバラバラに思いが投射されてくる。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2022年3月号