「日本外交のしたたかさ」とは何か?

新世界地政学 第126回

ニュース 政治 国際 中国

 岸田文雄首相は、国会冒頭の「施政方針演説」の中で、「厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される1年です」と語った。そして、「私自ら先頭に立ち、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し、『新時代リアリズム外交』を展開していきます」と続けた。

 米中対立、国際秩序の揺らぎ、経済が武器化する地経学的闘争という激変する国際環境の中で、現実直視を心掛け「したたか」な外交を追求していくとの決意表明である。

 外交上の最大の挑戦は米中対立である。

 バイデンの米国は、トランプの米国の延長というよりむしろ表裏一体のようだ。同盟重視の旗を掲げながら、フランスに根回しもせずに英豪とAUKUSを突如、発表する。「中産階級のための外交」はその実、「アメリカ・ファースト」の別名のように聞こえる。CPTPPはもう終わったこととして退け、インド太平洋の「経済的枠組み」なるものを唱え始める。

 一方、習近平の中国は、既存の国際秩序を自国の権益増進のために使い倒すことには関心を示すが、それに役立たないと見るとその機構を弱めるか、パラレルな機構をつくろうと仕掛ける。国際秩序・ルール形成においては、自国のガバナンス、つまりは「国情」を反映させることに傾注する。中国の「国情」に合わず、「国家安全」に添わないと判断したときは「例外扱い」を要求する。それに反対し、抵抗する国には「経済的威圧」で臨む。中国の究極的な関心は、自国の勢力圏を拡大することにある。

 岸田政権にとって深刻なのは、米国の内政の混迷と外交の整合性のなさである。「中産階級のための外交」では中国の国家資本主義を弾劾し、中国の核・ミサイル増強に対してはAUKUSで一発かまし、民主主義サミットを開催し、自由陣営の盟主として気勢を上げる――といった風にバラバラに思いが投射されてくる。

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source : 文藝春秋 2022年3月号

genre : ニュース 政治 国際 中国