サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します。
血液型の種類=43種
1900年、血液について研究していたラントシュタイナーは、奇妙なことに気づいた。他人の血液同士を混ぜ合わせると、凝集する場合としない場合があり、その組み合わせには規則性があるのだ。これがABO式血液型の発見で、輸血の成功率はこれによって飛躍的に高まった。
赤血球の表面は、糖鎖と呼ばれる物質でびっしりと覆われており、その構造の違いがABO式血液型を決定する。特にA型とB型の差はほんの僅かなもので、ただこれだけの違いが血液凝集という現象になって表れるのかと思うと、何とも不思議になる。
血液型というのはABO式だけではない。国際輸血学会は、Rh式、P式、ルセラン式など、現在までに43種の血液型を認定している。それら全ての組み合わせを考えると、ありうる血液型のパターンは天文学的な数字になる。人間の血液とは、恐ろしく多様なものなのだ。
血液型の一番の謎は、なぜそんなものが存在するのかという点だ。一説では、病気への抵抗力の差が原因だという。たとえばO型の人の糖鎖は、ピロリ菌が細胞に潜り込む足がかりとなりやすい。このため、O型の人はA型に比べて1.43倍ほど十二指腸潰瘍のリスクが高い。だが悪いことばかりではなく、O型は心筋梗塞などの循環器系疾患には強く、新型コロナに対しても重症化リスクが低いとの報告がなされた。他の血液型にも、それぞれかかりやすい病気、かかりにくい病気がある。
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source : 文藝春秋 2022年3月号