地域密着老人ホームで子供とふれあう

大特集 理想の介護と最期

長田 昭二 医療ジャーナリスト
ライフ ライフスタイル

地元で死ぬまで快適に過ごせる環境とは?

地域包括型のさまざまな制度が ©時事通信社

「地域包括ケアシステム」と呼ばれる高齢者を対象とした制度づくりが進んでいる。

 この制度を大まかに説明すると、「年を取って医療や介護が必要になっても、それまで住んでいた町を出ることなく、死ぬまで必要なサービスを受けられる」というものだ。これまでは病気になったら大都市の病院へ、地域の施設が一杯だから遠い町の高齢者施設へ、と、患者や利用者が動いていたが、この制度は、サービスを提供する側がつねに近くにいて寄り添うという考え方に立脚している。

「地域」をより鮮明に意識したこの制度が整備されれば、人生の終盤も、住み慣れた町で、見慣れた景色を眺めながら送ることができる。

 そこで、地域包括ケアの一翼を担う「介護施設」について検証してみたい。地域と密着し、先進的な取り組みを進める四つの施設を取材した。

施設を一つの地域に

 介護施設と地域の交わり――。その一つのモデルケースとして知られるのが「富山型デイサービス」だ。1993年、富山市内の病院で働いていた3人の看護師が始めたこの取り組みは、高齢者や障害者への介護・生活支援・自立支援、幼児や児童の一時預かりなどのサービスを、トータルで提供することを目的としたもの。従来の、高齢者は高齢者施設、障害者は障害者施設という枠組みを取り払い、一つの施設に色々な人が共存することで自然な交流を生み、施設の中を一つの地域、一つの社会として機能させようとするものだ。

 富山市にある「デイケアハウスにぎやか」もその一つで、1997年に開設されたショートステイ機能を持つ通所型デイサービス施設だ。デイサービスの定員は18人、泊まりは3人まで受け入れ可能。高齢者に限らず、障害を持つ子供や大人など、「生活を送る上での困りごと」がある人なら誰でも利用できる。

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source : 文藝春秋 2018年07月号

genre : ライフ ライフスタイル