戦国時代「4つの戦争」勝負の分かれ目
ある大学で歴史を教えている先生から「最近の学生の卒論のテーマは、戦国時代ばかりで、川中島の戦いで勝ったのは、上杉謙信か武田信玄かを論じているようなものが多くて、呆れるよ」という話を聞きました。確かに日本史の大きな流れからいえば、どちらが勝ったかはどっちでもいいことで、卒論で取り組むべき問題ではないのかもしれません。
その先生は「合戦のきったはったは小説や映画で楽しめばいい、戦国大名を扱うのであれば、その大名はどのような政治を行ったのか、その下で暮らす人々はどのような生活を送っていたのかを研究すべきだ」と言いたかったのでしょう。その意見には一理あります。
でも、そこには日本の戦後の歴史学の大きな弱点が露呈しています。それは「軍事」のタブー視です。戦前の軍国主義を過剰に反省するあまり、戦後の歴史学は長らく「軍事」を研究してはいけないことになっていました。
しかし、平安末期から江戸時代まで日本史の主役は武士です。武士の世界には重要な鉄則があります。それは、軍事的に最も優秀なリーダーが政治を行う、というルールです。「軍事」が「政治」に先行するのが武士の世界なのです。「軍事」をタブー視していたら、そのような世界を十分に理解することはできません。
武士が主役ではない今の世界を見渡しても、「軍事」と「政治」は密接につながっています。アメリカの強大な軍事力抜きにその覇権を論じる人はいないでしょう。
「軍事」をタブー視することなく、「軍事」と「政治」をつなげて、武士がつくってきた、この国の歴史を論じることはできないか。そんな思いで、私は『戦いの日本史』(角川選書)という本を書きました。そこでは、平安時代の治承・寿永の内乱から戦国時代の小牧・長久手の戦いまで8つの合戦を通じて、武士の歴史を描きました。「軍事」から「政治」を見たわけです。
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source : 文藝春秋 2018年06月号