記録的な猛暑や豪雨、特大台風などの超異常気象が起きているのは、日本だけではない。2024年6月には、イスラム教の聖地であるサウジアラビアのメッカで最高気温51.8度を記録し、1300人以上の巡礼者が死亡。8月にはギリシャで猛暑と強風によって大規模な山火事が相次いだ。既に米国などでは自然災害の多発で住宅保険に入れない事態となっている。
そんな中、世界的な異常気象と、海の機能不全との繋がりが注目されている。
海は地表の70%を覆い、地球上に存在する水の97%を占める。また、地球における酸素の50%を生み出す。さらに排出される二酸化炭素の30%を吸収し、温室効果ガス排出で生まれた過剰な熱エネルギーの90%を吸収するなど温暖化から地球を守る防御壁となってきた。
つまり海は気候や生態系、地球環境の安定に欠かせない制御装置、自然システムを支える「基幹インフラ」なのだ。しかし電気や道路などの社会インフラと異なり、海などの自然は保全・維持の対象として適切に評価されず、搾取や汚染によってその機能を失いつつある。
例えば、海水が大気から吸収した二酸化炭素はかつて藻などが処理できていたが、現在の吸収量は処理能力の限界を超え、海が酸性化し続けている――珊瑚や甲殻類の発育は阻まれ、牡蠣産業などに大きな影響が出ている。
世界のGDP(国内総生産)の70%が何らかの形で「自然」に依存しているにもかかわらず、これまで自然がGDPや財務諸表など経済的観点から抜け落ちていたという反省のもと、資産として見直す動きが広がりを見せている。
世界自然保護基金(WWF)によれば、主な海洋資産の価値は控えめに見ても24兆ドル(3456兆円)だが、このままでは海洋環境のダメージによって今後15年間で最大8兆4000億ドル(1210兆円)もの経済的損失が生じるリスクがある。また、私たちが生きている間に、海は人間の影響によって、劇的な変化を起こす分岐点「ティッピング・ポイント」に達するという。
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