世界第3位の自動車生産大国である日本が、電気自動車(EV)シフトに完全に出遅れている。国家戦略としてEVシフトを猛烈に進める中国では、新車販売台数2627万台のうち291万台(約11%)がEVだ。これは別格としても、米国も1493万台のうち43万台(約3%)。エンジン発祥国と言われ、ベンツやBMWなどディーゼルエンジンの強豪メーカーがひしめくドイツも262万台のうち35万台(約13%)。443万台のうち2万台(約0.5%)に過ぎない日本とは大きな差が開いている。
30年近く自動車産業を取材してきた筆者の見解では、出遅れの原因は大きく四つある。まず一つ目はハイブリッド車(HV)という成功体験に安住したこと。HVはガソリンで動くエンジンと、電力で動くモーターを切り替える複雑な制御技術が売り。トヨタが多くの特許を取得したため欧米メーカーがHVで日本車を追い越すことはできなかった。
しかし地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を多く排出する、エンジン車排除の動きが世界で強まり、HVもその対象となっている。環境問題に取り組む企業への投資を重視する「ESG投資」もEVシフトを加速させている。ドイツの高級車メーカー、アウディは26年以降に発売する新車はEVのみにする計画。中国のBYDは22年3月にエンジン車の生産を止めた。
ところが、トヨタを中心に日本メーカーはHVに固執している。「生産から廃車までのライフサイクルでみるとHVとEVの二酸化炭素排出量は大きな違いがない」という判断に加え、EVは主要部品である電池のコストがまだ高いため、利益が出にくいからだ。
ただ世界の潮流は確実にEVに移っており、日本経済新聞によると、全世界で21年のEVの新車販売台数が、初めてHVを追い越した。
第二の原因は、日本メーカーはEV事業を分社化せず、ビジネスのスピードが遅れていることだ。EVは単に電気を動力源とするクルマではなく、「スマートフォン化」している。常にソフトウエアがアップデイトされ、新車でなくても最新の自動運転アシスト機能などが使える。中国製EVの中には室内がミニシアターになるものもある。EVに進出したソニーもゲームとの融合を視野に入れる。EVには使って楽しい「感性的価値」も求められているのだ。
そもそもエンジン車とEVを一つの組織で同時に展開することには無理がある。「エンジン」という強い社内既得権が、新たなEVビジネスの出現を妨げるからだ。すでに米フォードはEV事業を独立採算制にし、仏ルノーは分社化を予定している。
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