「韓国経済は日本に追いついたのか」――昨今、このテーマについての議論が熱い。日本では、2027年に韓国の1人当たり名目GDPが日本を上回るという日本経済研究センターの予測が話題となった。
実は、すでに韓国が日本を逆転したという統計もかなりある。日本の経団連にあたる全経連(全国経済人連合会)が2021年8月に発表した「この30年間の韓日間の経済/競争力格差の変化と比較」と題した資料によると、韓国はS&P、ムーディーズなど三大格付け会社のグローバル格付けや、IMD(スイス国際経営開発研究所)の国家競争力順位、国連工業開発機関のCIP(国別工業競争力指数)順位などで、すでに日本をリードしている。平均賃金水準も2020年のOECD基準で、日本が3万8515ドル、韓国が4万1960ドルで韓国がリードした分野だ。企業価値で韓国のサムスン電子は世界14位なのに比べ、日本最高位のトヨタ自動車は36位に過ぎない。
また、BTSが新曲を出せば、米国のビルボードでトップを占めるが、日本のアイドルの中で米国チャートの上位に入るグループはない。ネットフリックスでは『イカゲーム』や『愛の不時着』などの韓国作品が世界を席巻したが、日本のドラマは力不足だ。
昨今の日韓を比較する際、筆者は「競争」と「IT」というキーワードに注目したい。まず、韓国経済をリードしている大企業で活躍している韓国の人材たちは、日本人には想像もできないほど過酷な競争を勝ち抜いて現在の地位に就いた。
韓国の大学進学率は70%台で、50%台にとどまっている日本よりはるかに高い。大学進学率が高いぶん、より良い大学を目指す受験競争も当然激しくなる。韓国の子供たちは小学生の時から平均2、3ヵ所の学習塾に通い、中学校からは入試塾で自分の学年より3年先の内容を学ぶ「先行学習」を受ける。
大学へ進学した後は、就活競争が新たに始まる。大卒者が年平均3%ずつ増加しているのに対し、高学歴の雇用は1.3%しか増加していない。このミスマッチによって、韓国の大学および大学院卒者の就職率は65%(2020年基準)程度にとどまっている。大手企業に就職するためには、大学の成績、海外研修経験、インターン経験、TOEICの成績、各種資格証などの「八大スペック」で武装しなければならない。就職後も自己啓発に邁進しなければ、40代から希望退職の対象になる。このような過酷な競争システムがグローバル経済の最前線で戦う人材を育成しているのだ。
「ネカラクペタント」が人気
韓国が日本より確実にリードしている分野といえば、「IT産業」だ。前述のIMDが発表した「2022年世界デジタル競争力」評価結果によると、韓国は8位、日本は29位となって、かなり差が大きい。
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source : 文藝春秋 2023年2月号