台湾の「救世主」はいかにして世界を制したか
2024年12月下旬、年の瀬も押し迫ったある日のこと。東京・麹町のラピダス本社を台湾の半導体関係者が訪問していた。来訪者を迎えたのは、小池淳義社長と3人のラピダス幹部。そして小池社長は会議の終盤になると、真剣な面持ちで台湾人に尋ねたのだという。
「TSMCはなぜここまで成功できたのでしょうか?」
ラピダスは回路線幅2ナノメートルの先端半導体を、米IBMから技術移転を受けて2027年に量産する計画だ。経営実績のない新興企業に少なくとも2兆円の政府支援が行われるのは、台湾TSMC(台湾積体電路製造)への依存から脱却するため、日本独自に“代替企業”を作る必要があるからだという。その意味では、小池社長がTSMCのカラクリを知りたがるのも当然である。
TSMCはオーダーメイドで半導体を製造する「ファウンドリー」の世界最大手だ。特にAI(人工知能)などに不可欠な最先端半導体の製造では、9割ものシェアを誇る独占企業である。台湾海峡の地政学的リスクが高まる中、ひとたび有事となればTSMCの半導体供給が途絶え、各国経済に甚大な影響が生じることが懸念されている。米中対立時代の最重要企業と呼ばれるゆえんである。
この最重要企業を、創業者モリス・チャン(張忠謀)は一代で作り上げた。半導体の生態系を統べるチップ・エンペラー、モリスとは一体、どのような人物なのか。

TSMCの設立は1987年。この時、モリスはすでに55歳だった。髪の大半がロマンスグレーの起業家である。実に還暦間近のこの年齢から彼の黄金期が始まるのだが、それ以前の人生の波瀾万丈ぶりは、昨年11月に完結した上下巻の自伝『張忠謀自傳』(遠見天下文化出版、未邦訳)に詳しい。
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source : 文藝春秋 2025年4月号