武力行使は外交の敗北を意味する(聞き手・歳川隆雄)
2016年6月から外務省事務次官を務めていた杉山晋輔氏(64)が、今年1月29日付で駐米大使に就任した。1977年に外務省入省。主に条約畑を歩み、その後、駐韓公使、アジア大洋州局長、外務審議官(政務担当)などを歴任してきた。
3月下旬にワシントンに着任する直前の杉山氏に、米朝会談の行方や北朝鮮の核・ミサイル問題、4月末にも南北首脳会談を開催予定の韓国・文在寅政権への考え、さらに、中国やロシアとの関係について、約2時間にわたって話を聞いた。
はじめに、皆さんが最も注視しておられるであろう朝鮮半島情勢についてお話ししたいと思います。
3月下旬の現時点では一切のことは予断を許しませんが、ひとまず、4月中にも南北首脳会談が行なわれる見通しとなっています。また、5月までにトランプ米大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談する意向だということも明らかになりました。北朝鮮との問題は常に一筋縄ではいかず、よくよく物事を見極めて冷静かつ慎重に判断する必要があります。ただ一義的には、日米が圧力を最大限に高めてきたことで、いま、一つの扉が開こうとしているのは、歓迎すべきことです。北朝鮮問題において、我々はしばしば「機会の窓」という言葉を使います。この窓は通常、滅多なことでは開きませんが、今回、もしその窓が開いて、さまざまな懸案事項が前に進んでいくための一助となれば、日本政府として歓迎すべきことです。
私が渡米する前の現段階では流動的な要素が多々ありますが、米朝会談が実現すれば、その後には日朝首脳会談を含む日朝交渉が再開されることになるかもしれません。
そのような流れのなかで、まずは核・ミサイルの問題において、これまで世界が求めてきた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」が本当に成し遂げられるのかどうか。そして、日本にとって極めて重要である拉致問題が解決するのかどうかが今後の焦点です。
米朝首脳会談が実現すれば歴史的に初めてのことではありますが、北朝鮮に裏切られてきた過去を踏まえれば、中身を見極めて、慎重かつ冷静に判断する以外にありません。
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source : 文藝春秋 2018年05月号