先端技術をめぐる公共調達は「司法」が裁くべきものなのか
「極めて普通のことをやった結果、罪に問われるのであれば、怖くて誰もこんな仕事は出来ませんよ」
そう慨嘆するのは、黒田知宏・京都大学大学院教授(医療情報学)だ。黒田教授は、京大医学部附属病院の医療情報企画部長を兼任し、同病院の情報システムのマネージメントを任されている。
黒田教授が嘆くのは、国立循環器病研究センター(大阪府)の情報システム運用・保守業務の入札で、医療情報部長が特定業者に有利な取り計らいをしたとして官製談合防止法違反に問われた事件の判決だ。大阪地裁(西野吾一裁判長)は3月16日、検察側の主張をほぼ全面的に受け入れ、被告人2人を有罪とした。
この事件は、大阪地検特捜部が逮捕・起訴した厚生労働省局長(当時)の村木厚子さんが無罪となり、取り調べの実態や主任検事の証拠改ざんが明らかになって以降、同特捜部が初めて行った本格的な独自捜査事件である。その裁判で、被告人がいずれも無罪を主張していると知り、私は裁判の傍聴を始めた。
傍聴するうちに、疑問が膨らんだ。それは、先端技術を導入して、現場にとってよりよいシステムを作ろうとすると、その担当者は罪に問われるリスクを背負い込まなければならないのだろうか、という問いである。この疑問は、判決を聞いて、ますます大きくなってきている。
というのは、最新のシステム導入を踏まえ、仕様書でその構築経験があることなどの条件を書き加えたところ、参入障壁とされて起訴され、判決でもそれが認められたからだ。これでは、国公立病院は担当者が罪に問われることを恐れて、先端技術の導入をためらいはしないか。
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source : 文藝春秋 2018年05月号