御年98歳、自民党政治の生き字引が語るポスト安倍
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今年98歳になった相沢英之氏は、大蔵省で主に主計畑を歩み、1973年に大蔵事務次官。退官後の76年には妻(女優の司葉子さん)の故郷である旧鳥取全県区から衆院選に出馬し初当選。以後、経済企画庁長官、金融再生委員会委員長、自民党税制調査会会長などを歴任し、2003年まで国政に携わった。引退後の05年に弁護士登録し、今も都内の事務所に毎日出勤する傍ら、麻生派(志公会)の顧問も務める自民党政治の生き字引だ。総選挙を前にして、安倍政権の4年9カ月の総括と今後の展望を聞いた。
今回の安倍さんの解散の決断には、正直に申し上げて、いささか驚いています。記者会見で自ら「国難突破解散」と名付けましたが、何のために今、このタイミングで解散しなければならなかったのか、今一つ釈然としませんでした。
争点の1つとして、2019年秋からの消費税率10%への引き上げに伴う増収分の使途の変更を挙げました。増収分約5兆円の一部を借金返済から教育無償化など子育て世代への投資に振り向けるという考えそのものに異議はありませんが、ただ、いささか唐突です。そうした使途見直しの議論が、これまで自民党内でなされてきたとも聞いたことがありません。
「解散の大義」などという建前ではなく本音を推測すれば、やはり大きな要因は、7月の都議選での歴史的惨敗にあったと思います。小池百合子都知事率いる都民ファーストの会の後塵を拝して以来失われつつあった自らの求心力を、今一度取り戻したい、という思いが根底にはあるのでしょう。いわゆる小池新党の準備が整う前に総選挙を戦うことで、「安倍一強」体制を復活させようとしているように見えます。
しかし、長い自民党の歴史を振り返っても、1人の人間が余りに長く総理・総裁の座に君臨するのは、問題だろうと私は考えています。
自民党はこの3月の党大会で総裁任期を「連続2期6年」から「3期9年」に延長しました。もし来秋の総裁選で安倍さんが3選されれば、吉田茂も佐藤栄作もはるかに超える史上最長の総理在任記録が視野に入ってくるというのですから、驚くほかありません。
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source : 文藝春秋 2017年11月号