父の彫刻とデッサンをなぜお求めになったのか
――今日は岩手県八幡平市にある末盛千枝子さんの自宅にお邪魔しています。10月20日に上皇后美智子さまが90歳の誕生日をお迎えになるということで、長年、交流のある末盛さんにお話を伺います。
このあたりは正面に岩手山が聳え、山裾まで丘陵が広がる風光明媚なところですが、もとはお父様である彫刻家・舟越保武さん(1912〜2002)の別荘だったそうですね。
末盛 父はここよりもっと奥の土地で生まれ、3歳ごろ盛岡に越しました。盛岡中学から東京美術学校に入って卒業した後、戦中戦後は疎開していた時期を除いて東京で活動していたんですね。70代半ばに病気で倒れた頃、世の中はバブルでしたけれど、母が「いつか岩手に家を作ってあげたいと思っていた」と率先して建てた家なんです。
――お父様は戦後日本を代表する彫刻家の一人で、代表作は長崎の……。
末盛 「長崎26殉教者記念像」(1962)がたぶん一番知られているかもしれないですね。
――「ダミアン神父」(1975)とか、カトリックにまつわるものが多い。
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source : 文藝春秋 2024年12月号