私はこう考える 完璧主義ゆえのお考え

総力特集 天皇「生前退位」の衝撃総力特集

末盛 千枝子 編集者
ニュース 皇室
末盛千枝子氏 ©時事通信

 たまたまつけていた NHKのニュースが「天皇陛下が」と言ったので、すわ何事とテレビのまえに飛んでいきました。一瞬、お体のことかと思い、ぎょっとしたのですが、「生前退位のご意向」と続いたのを見て、そうか、そういうことかと思いました。きっといつか変化がと思っていたからです。

 両陛下は、ご自分たちがどうあるべきかと、常に考えていらっしゃるのだと思います。お歳を召されてきたことは仕方ありません。お二人とも補聴器をつけていらっしゃるようにお見受けしますし、昨年の戦没者追悼式で天皇陛下が式次第をお間違えになったことは、とても気にしておられるようでした。私はあれは主催者側の手順が不十分だったのではないかと思っていたのですが、皇后さまは少し違うようでした。

 天皇陛下は科学者ですし、ご自分たちがどういう状況にあるか、冷静に理路整然と客観的に見ていらっしゃると思います。心臓手術もそういうことで出された結論ではなかったかと思います。

 今後のあり方についても、お二人でお話をなさっているのでしょう。3年ほど前には「ご陵とご喪儀のあり方について」という発表があり、できるだけ国民生活の負担にならないように、喪儀は簡素に行なうとのご希望が伝わりました。このこと自体が、本当に誠実に責任を持って考えぬいておられなければ出てこないことだと思い、圧倒されるような思いがしました。

 今回伝えられた生前退位のご意向が、その通りだとすれば、ご自分たちが公務を離れて楽をしたいからという理由でないことは明らかです。かつて皇后さまが、「陛下は本当に優しく導いて下さったけれど、公務に関しては決して妥協はお許しにならなかった」とおっしゃったのを思い出します。きっとそのことが皇后さまを今のお姿に導いてこられたのではないかとお見受けしています。お二人とも完璧主義でいらっしゃるし、極めて真面目なご夫婦で、細かいお心遣いも忘れません。東日本大震災のあとも、被災した子どもたちに絵本を贈るプロジェクトを始めた私たちに、お手持ちの中から相応しい内容の絵本を選んで、何度も送ってくださいました。

 両陛下は、目に見えない部分でも決しておろそかになさいません。園遊会や外国からの要人と接見される際には、そのお相手について予習を欠かさないと、おそばの方から伺ったことがあります。かつて、ある小国の首脳たちが御所へいらっしゃる前のこと、担当者が、

「この方たちとお会いになる機会は今後ないでしょうから、そんなにくわしくお知りになる必要はないのでは」

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2016年09月号

genre : ニュース 皇室