今回の映画特集では10名の方々にインタビュー、もしくはご執筆いただきましたが、いちばん最初にお話をうかがったのは、ミュージカル俳優の宮澤エマさんでした。
宮沢喜一元総理の孫である宮澤さんですが、過去のインタビューでは、優等生ばかりの家族の中で、「自分らしくいられることって何だろうと悩み、コンプレックスみたいなものもうっすら感じていました」と語っています(『婦人公論』2021年6月22日号)。舞台での成功を夢見ていても、「総理の孫」としてバラエティ番組に呼ばれることが多く、ミュージカル俳優として身を立てるまでには、長い道のりがあったそうです。
そんな宮澤さんのインタビューは、隠しきれないミュージカルへの愛が溢れ出し、次から次に言葉が出てきて止まらない。そんな感じでした。時間は予定の60分を大幅にオーバー。クラシカルな作品からディズニー、最新作までを網羅的に鑑賞されている宮澤さんですが、2000年代以降の作品、彼女にとって同時代的な作品に絞って話してくれました。
彼女が挙げたラインナップとおすすめの理由は、どれも思わず膝を打つものばかりで、作品を評価するその専門性の高さとレトリックの多彩さには驚くばかり。この人は本当にミュージカル映画の素晴らしさを伝えようとしている。そう強く感じたのは、「ミュージカルへの固定概念や苦手意識を持っている人たちにも……」という言葉を何度も使っていたことです。
「舞台だと歌と踊りのパワーが直に観客に伝わるので『登場人物が突然歌い出す』というそもそもの違和感を飛び越えやすいのですが、映画になると客観視する距離が生まれてしまう。観客が現実に戻りやすいという問題をどう飛び越えたかというと……」
「(『ウエスト・サイド・ストーリー』について)今の世代はギャングが優雅にバレエを踊るということが理解できないかも知れない」
そもそも“物語を歌で紡ぐ”というスタイル自体に違和感を持つ人たちは、特に彼女と同世代の若者層には多いのかも知れません。しかし、そこをどうやってミュージカル映画が乗り越えてきたのか、宮澤さんは熱く、激しく、まさに舞台から観客に訴えかけるように語ってくださいました。
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