自転車に乗ってとうとう6年目

火野 正平 俳優
エンタメ 芸能

 最初にNHKのプロデューサーから企画を聞いたときは「アホちゃうか」と思ったよ。普通、火野正平にこんなの頼まないでしょ(笑)。

 俺が自転車に乗って日本全国を旅する番組『にっぽん縦断 こころ旅』(NHK BSプレミアム)も、今年の3月からの放送でとうとう6年目。去年の秋に通算500日を突破したから、1年で100日は自転車に乗っている。66歳でこれだけ乗っている人は、なかなかいないだろ。

 確かに自転車は子どものころは好きやった。12歳からこの仕事をやっているけど、子役で稼いだギャラの大半を自転車につぎ込んでいた。中学・高校では毎日乗っていたし、サイクリングクラブにも入っていた。大阪の豊中に住んでいたから、六甲山にもよう上ったな。

 だから番組で久々に自転車に乗ったときも、段差があるとこでは必ず尻を浮かせていたし、体重移動も自然に出来ていた。スタッフはお尻が痛いって言っていたけど、俺は痛くなったことはない。俺のケツが凄いのか? って思ったけど、体が覚えていたからなんだろうな。もちろん坂道はしんどい。大山の鍵掛峠なんて「行くとこやない」って、スタッフもみんな愚痴っていたもの。

 自慢できるのは、これだけ乗っていてコケたことがないこと。昔はかなり危ない運転をしていたけど、いまコケたら大怪我するかもしれないから、だいぶ気をつけてる。若い頃はスピードが出すぎて、このまま行くと崖から落ちちゃうから、わざとコケて止める、なんてこともしていた。いま考えると恐ろしなるな。

 自転車だと車じゃ見えないものが見える。風も、気温も、雨も感じることが出来る。道端に虫がいたらそれも分かる。この番組は視聴者から貰ったお便りに書かれている「こころの風景」を探しに行くのがメインテーマだけど、自転車だからこそ見つけられる場所もある。たまに「何これ?」っていう場所もあるけどな。単なる路地の曲がり角とか(笑)。

 この番組のいいところは、手紙に書かれている風景が見えなくても、それで終わりにすること。例えば夕焼けって、天気が悪かったら見えないけど、それはそれ。「見えないからごめん」って。静岡に2週間いても富士山が一回も見えなかったり、富山に行っても全然立山が顔出さなかったり。あとは「心の目」で見てください、と。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2016年4月号

genre : エンタメ 芸能