手書きの「力」

大塚 貞男 兵庫教育大学准教授・心理学研究者

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 これからも手書きは必要か。

 文化庁の2021年度世論調査では、デジタル化の影響で「漢字を手で正確に書く力が衰える」と9割近い人が答えた。手書きの機会が減れば、使わない能力が弱まるのは当然である。しかし、それは単に「漢字が手書きできなくなる」だけの話なのだろうか。

 まず、デジタル化が手書きの力に実際に影響しているのかを確かめておきたい。

サインする人 ©Lehtikuva/時事通信社

 私たちは日本漢字能力検定(漢検)協会の協力を得て、大規模受検データを分析した。はじめに、読み書きの脳科学的モデルに基づく統計解析を行い、漢字能力が〈読字〉〈書字〉〈意味理解〉の3側面から成ることを確認した。

 次に、同じ検定問題の受検者が最も多く年齢層も幅広い2級の2006年と2016年のデータを分析し、年齢層(中高生、大学生、成人早期、成人中期)ごとの成績を比較した。その結果、読字と意味理解は両年でその傾向に違いがなかったが、書字だけは2016年の成人早期で相対的に低下していた。2008年のスマートフォン上陸以降、普及が最も進んだ20〜30代に現れた変化である。

 その影響が「漢字が手書きできなくなる」だけであれば、現代の成人がそうしているようにデジタルで補えばよい。しかし、それが子どもにも広がり、手書きの力が十分に身につかないことで、より複雑な言語能力の発達にまで及ぶなら、問題は深刻である。

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source : 文藝春秋 2026年6月号

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