佐山氏
家庭内感染を防ぐのは難しい
私は昨年末、新型コロナに感染したことで、この病気に対する認識が大きく変わりました。以前は「インフルエンザとの違いはどの程度なのかな」と漠然と考えていましたが、実際に体験するとまったく違う。
新型コロナの感染が拡大した当初から極力会食などはしないようにしていましたし、マスクや手指消毒などの対策を怠っていませんでしたので、感染経路はまず間違いなく家庭内感染でしょう。第2子出産のため一時的に同居していた子供が、まず感染しました。子供が「熱がある」と言い出して念のためPCR検査をしたら、翌日、陽性という結果がでました。それを知らされた12月15日の夜、私も37.5度の熱が出たので翌朝、保健所の指示でPCR検査したところ、感染が判明したのです。
出産の前後で子供は育休中でしたから、保育園の送り迎えとちょっとした買い物だけで、基本的に家にいました。感染防止対策は万全だったのに市中感染してしまった。新型コロナは誰でも感染する可能性があると痛感しました。それに最近は家庭内感染が増えているということですが、これを防ぐのは経験的に非常に難しいと思います。
広く知られているように新型コロナは発症の2日前から感染力があるとのことですが、発症の2日前は日曜で私は終日、在宅。家族以外とは接していませんでした。発症前日は、私が所属する投資会社インテグラルの朝食会に参加しています。このとき正面にはアクリル板があったので、両隣に座った人だけが濃厚接触者と認定されましたが、幸いなことに陰性でした。来客との面談ではマスクを着けた上で、アクリル板ごしに話したので、その方は濃厚接触者とはされませんでした。職場での感染対策はおろそかにできません。
発症した当日は朝からスカイマークに出社予定でしたが、念のためその日の会議は全て電話会議に切り替えました。この日の夕刻に子供のPCR検査の結果が出ることになっていたので、それが分かるまでは人に会わないようにしたのですが、これは大正解でした。出社していれば感染拡大の可能性があったと思います。「身近にPCR検査を受けた人がいたら、その結果が出るまでは、自分も他の人には会わない」。これが大きな教訓です。
もうひとつの教訓は「少しでも体調に異変があれば無理をせずにお医者さんに相談する」です。ふりかえると私は本当に運がよかった。まだ医療体制に今より余裕があったのか保健所にもすぐに連絡がついたし、PCR検査、入院とスムーズに進みました。私が発症した時点で東京都では入院要件が65歳以上でしたので、いくつかの既往症がある67歳の私も入院。そのすぐ後に入院の要件が変わりました。それが生死を分けることになったかも知れません。
というのも発症から10日後、容体が急速に悪化したのです。それまでは熱が38度台に上がったり下がったりで、普通の風邪と同じような状態でした。それが発症10日後、シャワーを浴びた後にかなり疲れを感じ、シャワー室の椅子に2度座りこみました。その日に撮ったレントゲンには過去2回にはなかった肺炎の影が写っていました。その夜から39.4度の熱が出て、言葉にできないほどのしんどさを味わいました。
入院したとき、お医者さんから「発症して1週間から10日したら急速に悪化する例もあります」と聞かされていましたが、まさにその通りでした。これはコロナウイルスそのものの仕業ではなく、感染が引き金になって免疫機能が暴走する「サイトカインストーム」だったと後で聞きました。翌朝、ステロイド剤「デキサメタゾン」を投与されました。これが私には劇的に効き、投与から4日後に退院できました。
最近、軽症だからと自宅やホテルで療養していた方々の体調が急変して、亡くなったケースが増えています。自宅やホテルでは薬が出ません。私は入院していたので、幸いにも最適のタイミングで薬を投与されましたが、そうでなければもしかしたら死んでいたかも知れません。
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