サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します
誰しも痛い思いをしたくはないものだが、中でも帯状疱疹の痛みは最悪のものの一つだ。経験者によれば、ひどい虫歯のような痛みが胸や腹などに広がり、夜も眠れないほどだという。特に50代以降で発症しやすくなるから、注意の必要な疾患だ。
帯状疱疹の原因となるウイルスは、実は水疱瘡と同じものだ。いったん水疱瘡にかかると、治癒後もウイルスの遺伝子は神経細胞内に潜伏して何十年も残り続ける。そして加齢やストレスなどによって免疫機能が低下すると、ウイルスが再活性化されて神経を傷つけ、強い痛みを引き起こすのだ。
そこで、帯状疱疹を防ぐワクチンが開発されている。生ワクチンと組み換えワクチンがあるが、たとえば後者は接種後1年で9割以上、10年後にも7割程度の予防効果があるとされ、合併症に対する効果も高い。
その帯状疱疹ワクチンに、思わぬ効果が報告されて話題になっている。このワクチンを接種することで、認知症の発症率が低下する可能性が示唆されたのだ。英国ウェールズの約28万人の高齢者を対象とした研究では、このワクチン接種者は非接種者に比べ、認知症の発症率が約20パーセント低いことが判明した。これは他の治療薬などに比べても、かなり大きな差といえる。
その後も、肯定的なデータがいくつも出てきている。最近発表された続報では、ワクチン接種によって軽度認知障害や、認知症発症後の死亡リスクも低下することが示された。認知症の進行経過全体で、抑制効果が見えていることは注目に値する。
一見認知症とは関係ない帯状疱疹のワクチンが、なぜ予防効果を示す(ように見える)のだろうか。帯状疱疹の発生を抑えることで、神経系での慢性的な炎症刺激が減ること、ワクチンが免疫系を刺激し、これが脳によい影響を与えるといった説が出ている。帯状疱疹による不眠や抑うつ状態は認知機能低下のリスク因子であり、これを抑える効果も考えられそうだ。これらいくつかの要因の複合という可能性もあり、立証にはまだ時間が必要だろう。
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