六月十七日、ヨーロッパ各国のテレビはいっせいに、ドイツの元首相ヘルムート・コールの死を報じた。
それを聴きながら、日本の元首相小泉純一郎が言ったという「政治家とは使い捨てにされるもの」を思い出していた。
そして、今私が書いている古代ギリシアのリーダーたちも、使い捨てにされたことでは同じなのだと思った。
「使い捨て」にされるには、まずは使ってもらわなくてはならない。民主政の国ならば選挙で絶対多数を与え、まあやってみなはれ、という感じで押し出してやらねばならない。大統領選に勝ったマクロンは議会選挙でも絶対多数を獲得したが、それをイタリア人は、ガソリンを満タンにしてやって、さあ行け、というフランス国民の意志の表われだと言っていた。
途中で給油所に立ち寄らなくてもよい状態で、つまり政局不安の心配もない状態にしてあげて、やってみなはれ、というわけだ。
これは国民が、国政の最高責任者に権力の行使を託したということである。
この面では、コールは恵まれていた。一九八二年から一九九八年までの十六年間、首相の地位にありつづけたからである。そしてこの人が最高に「使われる」、一九九〇年が近づいてくる。
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source : 文藝春秋 2017年08月号