本当に今日でいいの? と私は娘に聞いた
2014年11月1日、脳腫瘍のため余命わずかと宣告されていたブリタニー・メイナードは“安楽死”を選択して、29歳の人生に終止符を打った。
幸せな新婚生活を送っていたブリタニーの死が世界から大きな注目を浴びたのは、死に先立って、動画サイト・ユーチューブで安楽死を表明していたからだ。動画は、1200万回近く視聴されるほど大きな話題を呼び、今も影響を与え続けている。
他界から2年。遺族たちは安楽死という選択を広める活動を続けている。母デボラ・ジーグラーは、昨年10月、娘の生き方を描いた『ワイルド・アンド・プレシャス・ライフ』という本を出版。初めて明かしたその胸のうちを聞いた。
娘の様子がおかしいとわかったのは、2013年の大晦日のこと。その夜、娘は夫のダンに耐えられないほどの激しい頭痛を訴え、ダンは近くの病院に娘を連れて行きました。そこでCTスキャンの検査をしたところ、影が見つかったのです。娘はすぐさま大病院に搬送されました。
搬送先で、娘は2日間、たくさんの精密検査を受けました。いろいろな医師が入れ替わり立ち替り検査室に入ってきました。いったい娘はどこが悪いのか。私もダンもとても心配でしたが、医師に尋ねる勇気はありませんでした。不安な私たちをよそに、ブリタニー自身が医師に切り出したのです。
「いったい、私の身体に何が起きているんでしょうか?」
検査をした若い医師が答えました。
「脳にリージャン(病巣)があります」
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source : 文藝春秋 2017年03月号