我らが見た人間天皇

総力特集 天皇「生前退位」の衝撃

半藤 一利 作家
保阪 正康 昭和史研究家
ニュース 皇室

 象徴が意味するもの、昭和天皇との違い、皇太子への思い、健康状態……重い決断の背景を解き明かす

両陛下は慰霊のためパラオをご訪問 ©文藝春秋

1 明かされた今のご体調

 半藤 天皇陛下の「生前退位」のご意向が報じられ、日本中に大きな衝撃が走っています。去る7月13日、第一報となるNHKの7時のニュースが終わるか終わらないかのうちに、私の家の電話がじゃんじゃん鳴って、コメントを求められて大忙しでしたよ。

 保阪 私は仕事が朝早かったので、仮眠を取っていたのですが、同じような状況になりました。私は電話には一切出ませんでしたけれど。

 半藤 それにしても、NHKのニュースは作り込まれていましたね。これだけの大スクープを手に入れると、メディアは、とにかく1秒でも早く第一報を流したがるものです。その場合、アナウンサーがある事実だけを読み上げて、「はい。お終い」です。ところが今回は、どうも勝手が違うんですね。きちんとイメージ映像が用意され、論点もきれいに整理されていた。そのうえ、担当記者が出てきてコメントまで付けている。実に丁寧な作りをしていました。私は、「ははあ。NHKは準備万端整え、タイミングを計って報じたな」と感じました。

 保阪 私も準備をしたうえで、発表のタイミングを探っていたと思います。それゆえにか、いくつかの陰謀説めいたものがささやかれていました。「直前の7月10日の参議院選挙で与党が大勝し、さらに憲法改正の発議ができる3分の2議席を取ったからだ」とか「陛下のご体調が悪くなり差し迫った問題のよう」といった根拠のない憶測ばかりです。中には、「NHKの会長が来年で任期が切れるけれど続投したいので、政府のいいなりになって情報を流した」なんていうものまであるんですよ。いずれも信憑性にかけますし、私には判断がつきませんけど、どう思いますか?

 半藤 たしかに13日の報道というのは微妙な時で、意図的なものは感じますが、いまは深読みしてあまり難しく考えることなく、お気持ちを素直に受け止めるべきではないでしょうかね。陛下がこのような形で国民に伝えてくださったことの意味を考え、これからの皇室のあり方をしっかり国民1人ひとりが考える時じゃないかと思います。

 象徴天皇である陛下が、「皇室典範を変えて退位できるようにして欲しい」と望むこと自体が、政治介入との批判を受ける可能性があります。それでも敢えて「退位」の意向を洩らされたとすれば、主権者である国民に「どうか考えてほしい」という強いメッセージを送りたかったからではないでしょうか。

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source : 文藝春秋 2016年09月号

genre : ニュース 皇室