原貢78年の壮絶ケンカ人生

息子・辰徳に狂気の体罰

松下 茂典 ノンフィクションライター
エンタメ スポーツ

甲子園を沸かせた鬼監督の情熱は、巨人軍の監督とエースとなって花開いた

原貢監督と息子・辰徳 ©時事通信

 五月二十九日午後十時四十分、原辰徳の父であり、菅野智之の祖父である原貢が、心不全のため死去した。七十八歳であった。

 辰徳と同期で東海大相模のエースだった村中秀人(現・東海大甲府監督)は愛弟子とあって、貢のことを「オヤジ」と呼んだ。

「ぼくが神奈川県相模原市の北里大学病院に駆け付けたのは、オヤジが心筋梗塞と大動脈解離で倒れた翌日、五月五日のことでした。オヤジはICU(集中治療室)に入っていて、娘の詠美さん(菅野智之の母)が付きっきりでした。詠美さんのダンナで、東海大相模野球部の後輩である菅野隆志君もいました。面会謝絶だったんですが、『どうぞ』といわれ、中に入りました。オヤジは酸素マスクをし、眠っていました。おでこを触ると、詠美さんが『あったかいでしょ』と呟き、ドキリとしました。ちゃんと生きてるでしょ、という意味に聞こえたからです。甲府に戻り、一般病棟に移ったら、またお見舞いに行こうと思っていた矢先、今度は脳梗塞を引き起こしてしまって……。あんなに元気だったオヤジが逝くなんて本当に信じられません」

 昨年の春と夏、それぞれ七時間におよぶロングインタビューを行い、取材を通して濃密な時間を過ごしたわたしにとっても、貢の突然の死は大きな驚きであった。

 彼の取材でいちばん印象に残っているのは、初めてロングインタビューを行った昨春の四月十日。菅野が中日戦でプロ入り初勝利を挙げた四日後のことである。

 白髪を短く刈り込んだ貢は、がっちりした体で、眼光が鋭く、全身に生気をみなぎらせていた。

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source : 文藝春秋 2014年08月号

genre : エンタメ スポーツ