ロシアのウクライナ侵略によって、世界の安全保障環境が一変しました。昨年の8月まで経済産業大臣として、我が国のエネルギー安定供給のため奔走してきましたが、こうした安全保障の環境変化は、我が国にとって対岸の火事ではありません。
アジアにおいて、北朝鮮は、このところかつてない頻度でミサイル発射を繰り返し、我が国の領域を飛び越えるミサイル発射を行うなどその挑発行為はますますエスカレートしています。2021年の、中国軍機による台湾領空への侵入は、前年の2倍以上となり、台湾海峡の緊張が高まる中で、昨年8月には事前に発表された演習計画とは言え、台湾周辺に9発もの弾道ミサイルが中国から発射されました。
こうした行為に、我が国として抗議を繰り返すだけでは、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことはできません。必要なものは、言葉ではなく、力。目に見える抑止力です。我が国は、戦後一貫して、平和国家としての道を歩んできました。その歩みはこれからも変わることはありません。「専守防衛」という我が国防衛の基本方針はしっかりと堅持しながら、我が国を攻撃しようとしている相手に対しては、「それはやめたほうがいい」と考えさせる。そうした十分な能力と意思が、我が国にはある、ということを内外にはっきりと示すことが重要です。さらに抑止力向上の観点から、9年ぶりに国家安全保障戦略を改定し、我が国の反撃能力を保有・増強します。
私たちの国家としての防衛の意思を明確に示す。そのために、自民党では昨年の参院選で、NATO諸国と同様のGDP比2%以上を念頭に、5年以内に防衛力の抜本的強化を進めると、国民の皆様に公約しました。国民の命と平和な暮らしを守る。そして、領土・領海・領空は、断固として守り抜く。これは、政治の最も重い責任であります。
現下の厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、一刻の猶予もありません。5年と言わず、可能な限り前倒しで、その実現を目指す考えです。今後5年間の防衛力整備計画も43兆円程度と国民の生命と財産を守るために真に必要なものを積み上げています。同時に、今ある様々なリソースも最大限活用していく知恵も大事です。今まで実施してこなかった自衛隊と海上保安庁の有事の相互連携の仕組み作りが、2021年の私の国会質疑を機に動き始めました。そのほかでも産業界やアカデミアに眠る先端技術のシーズと防衛ニーズを連携させるなど、できることはすべてやることが大前提です。
また、強い防衛産業なくして、防衛力強化はありえません。足下では企業の防衛産業からの撤退が続く事態を食い止めるため、防衛調達における利益率改善を進めていくことになりました。有志国と安全保障面で連携していく観点からも、防衛装備品の海外移転のあり方についても抜本的に見直していくことが不可欠です。技術の進歩により、無人機の活用やハイブリッド戦など新しい戦い方がどんどん生まれています。サイバー、宇宙、AI、量子、半導体など最先端技術への投資と取り込みを戦略的に大胆に行っていく必要があります。
財源確保の道筋
財源についても、国民の皆様に見える議論が必要です。幸い、コロナ禍からの景気回復過程の中で、2022年度の歳入は、当初予算から3兆円以上上振れしました。アベノミクスのレガシーにより、税収は過去最高となっています。まずは、経済成長を確保しその果実を活かしていくことが基本です。その上で、必要な財源確保に向けて、徹底した歳出改革を行っていく事を示しましたが、大事なことは、初めから増税ありきでなく、経済成長も見据えたその果実と大胆な歳出改革や税外収入を含めて様々な知恵を出しながら、我が国の防衛力を裏付ける財源を確保すること、そして、最後にどうしても足らざる分があるならば、国民の皆様に説明し、その理解を得ながら、なるべく負担のかからない形でお願いすることです。
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