LGBTには左派もいれば保守派もいる。考えてみれば当たり前で、筆者をふくめたLGBTはセクシュアリティ以外、異性愛者と変わらないからである。ところが、マスコミは、なぜか左派LGBT活動家の偏った主張しか伝えない。そしてそこには多くの嘘や事実誤認が含まれている。いくつか事例を挙げてみよう。
2014年、名古屋市で同性パートナーを殺されたゲイ男性が犯罪被害者等給付金を申請したところ、愛知県公安委員会が認めなかったため、提訴した事件があった。しかし裁判所は一審(2020年)、二審(2022年)ともに訴えを棄却する。
左派LGBT活動家は、事実婚同然の同性愛カップルに犯罪被害者等給付金を支給しないのは差別だと騒いだが、実は、このゲイ男性と殺人犯の男性は不倫関係だったのだ。当初、マスコミはこの事実を報じていたが、左派LGBT活動家からクレームが入る。彼らが思い描く「LGBT物語」に沿わないファクトだからだ。
現在、全国各地の自治体でアウティング禁止条例を制定することがブームになっている。そのきっかけとなった一橋大学ゲイ学生転落死事故も、左派LGBT活動家によって歪曲されてしまったニュースのひとつだ。異性愛者の男子学生に恋愛感情を吐露したところ、アウティングされ、ショックのあまり学生は校舎から転落死を遂げた――。左派LGBT活動家は記者会見を開き、そう説明したが、そんな単純な話ではない。
裁判を傍聴した筑波大学の星野豊准教授によると、告白された異性愛者の学生はゲイの学生を傷つけないよう丁寧に断っていた。ところが、それ以降も執拗に付き纏われ、ボディタッチなどもあったため、堪らなくなり、別の友人に事情を打ち明けたのが真相だ。この事件をもとに作られているアウティング禁止条例は、同性愛者から告白されると墓場まで持っていかなくてはならないことを示唆しており、LGBTへの理解促進とは程遠い事態になっている。
2022年に開催された「トランスジェンダー国会」。自己申告(性自認)のみによる戸籍の性別変更を可能とするよう、左派LGBT活動家が訴えた。現行の性同一性障害特例法は性別適合手術を戸籍の性別変更要件の一つに据えており、これは国家による強制的な「断種」だと彼らは難詰したのだ。ところが同法が成立した2003年当時を知る当事者から「それは違う」と異議が寄せられた。もともと性同一性障害特例法は、手術によって女性/男性になっていた人が、見た目が戸籍の性別と違うため生活上の支障をきたしていたのを解消する目的で作られた法律だった。彼らは、身体の性と性自認が一致しないことが苦しくて手術をしたのであり、決して望まない断種をさせられたわけではない。これは当時の報道からも確認できる。
そもそも性同一性障害特例法は性同一性障害者のためのものであり、トランスジェンダー全般に適用することを前提としていない。
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source : 文藝春秋 2023年2月号