人民解放軍の弱点とは

この国をいかに守るか

小原 凡司 笹川平和財団上席研究員
ニュース 社会
小原凡司氏

 2022年10月の中国共産党二十回党大会およびそれに続く二十期一中全会において、完全な支持がないにも関わらず、習近平氏が自身の一強体制を完成させた。強引な権力掌握だ。

 二十回党大会における報告や採択された党規約で用いられた台湾に関する表現は目新しいものではない。19年から強化された中国共産党の香港民主派弾圧は、台湾社会に「一国二制度」に対する強い不信を抱かせた。この頃から中国は懐柔を中心とした影響工作等による台湾統一は難しいと考え、軍事的圧力をかけて台湾社会を屈服させ「平和的統一」に導くという考えに傾く。しかし、米軍の軍事介入を信じれば台湾社会は強靭性を保つだろう。中国は米国を抑止する必要があるのだ。

 対米抑止の最終手段は大陸間弾道ミサイル(ICBM)等の戦略核兵器である。これまで中国は核弾頭数やICBM発射機数の差を理由に対米核抑止の効果を不安視してきた。欧州のシンクタンクによれば、22年1月現在、中国の核弾頭保有数は350発、米国のそれは5428発である。そのため中国は、対米核抑止の破綻に備えてA2/AD(接近阻止・領域拒否)能力を構築してきた。最大射程4000キロメートルに及ぶDF-26対艦弾道ミサイルなどを配備し、米軍に「近寄るな」と威嚇する。また、在日米軍基地の多くは射程2000キロメートルとも言われるDF-21D対艦弾道ミサイル等でカバーされている。

 その中国が、戦略核兵器で米国に並びつつあるという自信を見せ始めた。内モンゴル自治区や甘粛省などにICBMサイロを建設しているのだ。サイロは位置が暴露されており、敵の第一撃で無力化される。敵のICBMの着弾を待たずに発射するLOW(警報即発射:Launch on Warning)を採用せざるを得ない。中国は、米国と対等にICBMを撃ち合えると考えればこそ、サイロを建設する。さらに、米国防総省の報告書によれば、中国の核弾頭保有数は35年に1500発に達する可能性がある。同報告書は、中国が最小限抑止から逸脱していると懸念を示す。

中国の空母 ©時事通信社

最大の脅威は中国国内に

 それでも中国の不安が解消された訳ではない。通常兵力が米国と対等でないからだ。米国は現在でも通常兵力で中国本土を攻撃できる。一方の中国には米国本土を通常兵力で攻撃する能力が欠如している。

 21年11月に発表された米中経済安全保障調査委員会の議会報告書は、中国が経済力をテコにしてラテンアメリカ・カリブ諸国に軍事的影響力を拡大しようとしていると警鐘を鳴らす。米国は、軍民両用の港湾などを中国が得ることを警戒するのだ。

 米国を通常兵力で攻撃する際の主役は空母だろう。中国は、22年6月、3隻目となる空母「福建」を進水させた。「福建」は電磁カタパルトを装備し、航空機運用能力を向上させているとみられるが、カタパルトまたは同装置に電力を供給する電源装置に不具合があるという分析もある。また、新型空母艦載機は完成していない。21年に飛行試験を開始するとされていたが、22年5月にようやくネット上にJ-35と呼ばれる機体が現れたばかりだ。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会