手練れの業界ウォッチャーが、新聞報道にもの申す!
★おっかなびっくり「安倍回顧録」
いまさら新聞のおかしさに戸惑うほど初心ではないが、それにしても『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)の扱いの冷淡さは、不思議でならない。
読売の現役の政治記者らが生前、安倍元首相から長時間聞き取った生の証言録である。安倍氏が凶弾に倒れ、旧統一教会問題を含めて長期政権の功罪論は今なお喧しい。2月上旬に上梓されて、さぞや侃々諤々の紙面が展開されるかと思いきや、さにあらず。正面からの論評は一向に現れず、とってつけたようなおっかなびっくりの記事ばかりが続く。
その寒々しさは、中央公論新社がホームページで一覧にした「メディア情報」を読めば一目瞭然だ。発売に合わせて9日には、朝日と毎日、産経に「掲載されました」とあるが、その中身たるや、例えば朝日はこうだ。
「財務省による『安倍氏降ろし』あった? 回顧録めぐり岸田首相答弁」
6日の朝日新聞デジタルで「安倍氏『財務省の策略の可能性ゼロではない』 回顧録で森友事件語る」としていた朝日である。何のことはない、あの膨大な証言の中から「森友」だけを拾い、野党の追及に乗っかって続報を書いた形だ。
11日には毎日に「書評が掲載されました」とある。確かにあるだけ他紙よりマシだとは思うが、評者の元外務官僚の佐藤優氏は「安倍氏が歴史法廷の被告人席に立つ覚悟をもっていることが行間から伝わってくる」としつつも、結局は自身の専門領域である北方領土交渉など対ロシア外交に筆を費やす。むろんこれは評者の責任ではあるまい。頼めばこうなることなど、書評欄の担当者が分かっていなければおかしい。
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source : 文藝春秋 2023年4月号