まな板のうえに押さえて刻みゆく葱の一生(ひとよ)の今どのあたり
水平に首をのばして冬空の雲より白きコハクチョウ飛ぶ
葱メンマもやしチャーシューにぎやかなラーメン食べるは冒険に似て
コハクチョウのなかの琥珀のかがやきが流れる寒き琵琶湖の空を
むんぐりと首をΩ(オメガ)に曲げながら刈田をあさる白鳥の群れ
首筋に灰色のこる幼鳥の死んで生まれてまた餌を食む
どんぶりの汁飲み干せば妻も子も消えてお冷やとわたしが残る
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source : 文藝春秋 2023年4月号