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「ジャニーズは第三者委員会の設置を」ジュリー社長謝罪動画を見て性暴力被害者・二本樹顕理さん(39)がコメント

ジャニー喜多川氏性加害問題

秋山 千佳 ジャーナリスト

電子版ORIGINAL

ニュース 社会 芸能

 ジャニーズ事務所創業者で前社長の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題。2023年5月14日、同事務所の藤島ジュリー景子社長は謝罪する動画と文書を発表した。文書の中で、ジュリー社長は「ジャニーとメリーの二人体制=ジャニーズ事務所であることを、所属する全員が当然のこととして受け入れてしまっていたように思います。私自身その異常性に違和感を持つことができなかったわけで、ただただ情けなく、深く後悔しております」と、当時の事務所の運営体制の“異常性”にも言及した。

 二本樹顕理さん(39)はジャニーズJr.として活動していた1996年秋以降、少なくとも10回程度の性被害にあったと、「文藝春秋 電子版」で実名顔出しの告発を行っている。二本樹さんに、ジュリー社長が発表した事務所の見解と対応について改めて語ってもらった。

二本樹さん

――ジュリー社長の発表をどう受け止めましたか。

 二本樹 事務所として公式に性加害を謝罪したのはこれが初めてだと思いますので、そういう意味では、大きな前進だと受け止めました。自分が生きているうちに事務所社長の謝罪を目にするとは想像していませんでした。むしろ、下手したら永久に明るみに出ることがないかもしれないと考えていましたので。ジャニーさんが生きていたら絶対にあり得なかったと思います。

――ジュリー社長の動画では「被害を訴えられている方々に対して、深く、深くお詫び申し上げます」という言葉がありました。一方で、見解文では「『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく」などと性加害の明言を避けています。

 二本樹 その点は曖昧な表現がいくつかあり、濁しているような印象を受けました。

ジャニー喜多川氏の性加害について動画で謝罪をした藤島ジュリー景子社長

――ジャニー氏の性加害を事務所、またジュリー社長は知らなかったのかという問いに対して、ジュリー社長は「知りませんでした」と答えています。一方、二本樹さんは「周りの事務所の大人たちは、ジャニーさんの行為を知らないわけがありません。マネジャーがホテルまで送迎することはよくありましたし、皆が黙殺していると感じていました」と証言しています。

 二本樹 そもそもジャニーさんは、レッスン現場をはじめ他のスタッフがいる現場でも、不自然な行動が多かったんです。Jr.たちを自分の周りに密着させて座らせたり、肩に手を回したり太ももを触ったりといった、明らかに少年愛的な行動です。人目につくところでも日常的にしていたので、傍から見ても「おかしい」と気がつくはずです。ジュリーさんがレッスン現場などに同席されているのは私も何度か見ています。しかも性加害の告発は1960年代からあったわけです。ホテルまで送迎したマネジャーなどはもちろんですが、ジュリーさんも何も気づかなかったということはありえないと思います。

――ジュリー氏の見解文には、社長就任以降「保護者宅からの活動参加」等を推進したとあります。ということは、ジャニー氏がJr.たちを宿泊させる「合宿所」で何があったのかを理解していて改革したのではないかとも思えますが。 

 二本樹 そうですね。私はジャニーさん時代の役員も皆知っていたと思っています。

――2003年に性加害の真実性が認められた東京高裁判決が出た時も「ジャニー本人は自らの加害を強く否定していた」ということですが。

 二本樹 ジャニーさんが決して認めないだろうということは推測できましたけど、むしろメリーさんの「誤解されるようなことはしないように」という言葉にびっくりしました。誤解で済むのかと。事務所としてその時点でもっと追及するべきだったと思います。また、メディアが報じなかったことも問われるべきだと私は思っています。事務所もメディアも当時の告発を黙殺したことで、その後も被害者が出続けたわけですから。

――事務所は今後の調査について、第三者委員会の設置を否定しています。

 二本樹 これまでの経緯を考えると、第三者委員会を設置せずにどうにかできる問題ではないと思います。この発表の前に行われた事務所内での性加害調査で、現役の所属タレントたちを相談担当に据えたことからして疑問があります。被害者である可能性も含んでいる人たちに相談担当をさせるというのは大きな矛盾ではないでしょうか。そういうことを昨日までしていた組織が第三者委員会を設置せずに調査を行うというのは、信じろと言われても無理な話です。

――二本樹さんは告発記事の中で、「デビューした人たちも、この問題を墓場まで持っていこうと思わないでほしい」と訴えておられます。

 二本樹 彼らのブランドイメージを考えるととても難しい問題ですが、被害に遭った人には一緒に証言してほしいという思いはあります。今の仕事や立場があるから言わないというのでは、数多くの事実が闇に埋もれてしまうからです。それこそ第三者委員会を設置して匿名で証言できるようにできれば、それでもいいと思います。

 個人的には、退所者だけが声を上げている現状はフェアじゃないという気持ちもあります。一般人である私も、証言することに個人的なメリットはなくて、むしろ犠牲を払っています。ただ、被害者が泣き寝入りしないといけないような社会であってほしくないんです。勇気を持って告発することでしか変えていけない未来があると思いますし、他の被害者にも臆せず声を上げてほしいです。それと同時に、声を上げる人たちを淘汰しない社会になっていってくれたらいいなと願っています。

――一方、既に事務所を離れている被害者に対しては、外部窓口を月内に設置し「外部の専門家の協力を得る予定」だとしています。連絡するつもりはありますか。

 二本樹 今は何とも言えません。信用していいのかな、とか、こちらも弁護士を立てた方がいいのかな、といったためらいがあるからです。だから第三者委員会が設置された方がいいという気持ちが強いのかもしれません。また、現時点では被害者の方から来てくださいというスタンスですよね。私の元には既にメディアの取材依頼が来ていて、アプローチしようと思えばできる状態ですが、事務所からはまだ接触がありません。連絡していただけるなら応じたいとは思っています。

 

――二本樹さんは告発記事の後編で、性被害のトラウマの深刻さについて語っています。特に依存の問題について、ジャニーズのタレントの、同様の問題が報じられるたびに「少なからずジャニーさんの影響があるのかなと思う部分があります」と述べておられました。被害者の精神的苦痛に「誠実に向き合ってまいります」というジュリー社長に対し、言いたいことはありますか。

 二本樹 性被害のトラウマのケアは、専門家でないと不可能だと思います。私が聞いた話では、子ども時代の性被害の影響は、戦争で兵士が抱えるPTSDと同等だそうです。そういう被害者が立ち直っていくには、専門的かつ長期的なケアが必要になるわけです。現に私自身も、退所してからの人生がトラウマによって相当左右されてきたと感じています。

 これから被害者がさらに出てくることが考えられますけど、事務所には一時的な対応で終わってほしくないと思っています。事務所がどんな対応を取っていくか、私も注視していきたいです。

秋山千佳さんがインタビューした、二本樹さんの告発記事もあわせてご覧ください。

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース 社会 芸能