《抑うつ、性依存、自殺願望も》ジャニー喜多川氏による性暴力 トラウマの現実を元Jr.が実名告発

連載「ルポ男児の性被害」第3回・後編

秋山 千佳 ジャーナリスト

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「日本ではそもそも男子の性被害を想定していないと感じます。ジャニーズのことも、都市伝説くらいに軽く考えていたのかも」――13歳のジャニーズJr.時代、故ジャニー喜多川氏から性被害を受けた二本樹顕理さん(39)は、長い間、強い自己嫌悪に苛まれ、一時は「もう死ぬしかない」と思いつめたという。どん底まで落ちた時は聖書に救いを求め、カウンセリングを受け、トラウマに向き合った。ジャニー氏死去の一報に触れた時、「ああ、これで少年たちを食い物にするような人物がこの世からいなくなったんだ」と安堵した。

これまで本連載では小中時代に教師から性暴力を受けたケースを取り上げたが、絶対的な力関係の下で被害に遭っている子どもが声を上げられないのは本件でも同じである。本件がさらに悪質なのは、犠牲の実態を知っても、周囲の大人たちが権力者に忖度し、見て見ぬふりを続けてきたことだ。性暴力の実情を長年取材するジャーナリストの秋山千佳氏の徹底取材第3弾。(連載第3回・後編、前編はこちら

◆◆◆

「皆が黙殺していると感じていました」

 ジャニーズ事務所退所翌年の1999年。二本樹顕理はアメリカへ渡り、オーディションを受け、4人組ロックバンド「No Curfew」のギタリストとしてメジャーデビューした。メンバーには、後に世界的人気を誇るミュージシャンとなったサンダーキャット(当時は本名のStephen Bruner名義)がいた。サンダーキャットは大の親日家として知られる。

 二本樹は照れくさそうに言う。

「スティーブ(サンダーキャット)とはティーンエイジャーの頃からずっと友だちで、『初めて僕に日本を紹介してくれたのはアキだ』と言ってくれます。彼はグラミー賞も受賞して、私の方はもう全然実力が及ばないんですけどね」

二本樹さんとサンダーキャット氏

 当時のCDジャケットを見れば、センターで写る二本樹は顎下まで伸ばした髪を金色にし、目つきは鋭い。あどけなかったジャニーズJr.時代とは別人のようだ。

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