降って湧いた脱原発「小泉リスク」

赤坂太郎

ニュース 政治

月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。混迷する野党は蚊帳の外。盤石の政権を揺るがしたのは、意外な男だった。

「首相の所信表明演説を聞いて思い出したのは『意志の力』という言葉を使った独裁者だ。世界を破滅の淵に追いやったというのが歴史の事実だ」

 参院選後初の本格的な国会論戦となった衆院本会議の代表質問。民主党代表・海江田万里は威勢良く、ナチス・ドイツのヒトラーを引き合いに首相・安倍晋三を牽制した。安倍は演説で「意志の力」という言葉を4回も繰り返した。海江田の念頭にあったのは、1934年9月のナチ党全国党大会を記録したレニ・リーフェンシュタール監督の映画「意志の勝利」だろう。しかし、その威勢も、集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法案の成立にひた走る安倍に、皮肉をぶつけるのが精一杯と印象付けただけだった。

 海江田の空回りは代表質問の直前、10月16日の党代議士会から始まっていた。「いつもは渋めのブルーのネクタイをしているが、今日は赤いネクタイをして燃える闘志で頑張りたい」と気合いを入れた海江田だったが、党内から、台風26号の被災地の惨状を意識して「赤は不謹慎なのではないか」と諫められ、黒と灰色のストライプ柄に替えさせられていた。

 2016年の参院選まで本格的な国政選挙がないとみられる中、反転攻勢の展望が開けない野党側の混迷は、国会が始まっても深刻度を増す一方だ。安倍内閣の支持率は消費税増税の発表後も依然として高く、政権に隙は見当たらない。

 民主党は、いまだ集団的自衛権や憲法改正をめぐって旗幟を鮮明にできていない。原発の汚染水問題も、海江田が事故当時経産相として対応に当たった経緯を考えれば、「無罪」とは言い切れない。海江田の安倍攻撃が奏功しないのも無理はない。

 その後の衆参両院での予算委員会でも、民主党議員の質問は迫力を欠いた。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2013年12月号

genre : ニュース 政治