サミットを利用した強引な政策転換の吉凶
「現在直面しているリスクは、リーマンショックのような金融不安とは全く異なるが、危機に陥ることを回避するため、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだと判断した。新しい判断について、国政選挙である参議院選挙を通して、国民の信を問いたい」
国会の会期末を迎えた6月1日、総理官邸の会見室。首相・安倍晋三はテレビカメラを見据えながら、そう決意を表明した。
衆院解散を見送り、消費税率の10%への引き上げも2年半先送りするという決断。参院選は伊勢志摩サミットとオバマ米大統領の広島訪問という外交をアピールして臨むことになる。守勢ともいえる「二重の決断」は政権運営に吉と出るか、凶と出るのか。その行く手は安倍自身さえ見極め切れない。
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「衆院選をやれば40議席も減らすことがわかっているのに解散することはないよね……」
安倍が問わず語りに側近の1人にこう漏らしたのは5月の大型連休明けだった。
自民党選対は年明けから何度か、独自の調査を基に、衆院を解散した場合の獲得議席をシミュレーションしてきた。大型連休の外遊中に安倍に報告された結果は、自民党が現在の291議席から「40程度は議席を減らす可能性が高い」というものだった。
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source : 文藝春秋 2016年7月号