教祖・麻原の洗脳から救うことはできなかった
春陽が麗らかに射す、気持ちのいい日曜日だった。1995年3月12日、近くの公園では家族連れが休日を楽しむ一方、埼玉県の自衛隊・朝霞駐屯地には物々しい空気が漂っていた。私の所属する警視庁捜査一課のメンバー全員が招集されていたのだ。警視庁が訓練で自衛隊の施設を使用するのは極めて異例のことだ。
グラウンドには240人余りの捜査員が怪訝そうな顔で並んでいた。訓練の目的が知らされていなかったためだ。その後始まったのは、ガスマスクの着脱訓練、噴霧器による洗浄訓練だった。
「オウム真理教か……」
誰もがそう直感した。
約1週間前、東京・品川区の公証役場事務長(仮谷清志さん)の拉致事件が発覚し、オウム真理教の関与が疑われている最中だった。強制捜査は目前と囁かれているなかでの、この極秘訓練だ。教団が保有しているとされる化学兵器・サリンへの対策なのだろう。
「地下鉄サリン事件」発生のわずか8日前のことだった。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2019年5月号