月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。本当に衆参ダブル選はないのか? 永田町のシナリオは大幅修正を迫られた
衆参ダブル選、消費増税先送り議論はどうなるのか――。4月14日から相次いで発生した熊本を中心とした地震は、夏に向けて永田町で積み上げられてきた政局シナリオに大幅な修正を迫った。
「被害状況の把握と、そして災害応急対策に全力を尽くすようにすると、そしてまた、国民の皆様に情報提供するようにという指示を出しました」
14日午後9時40分過ぎ、東京・渋谷のフランス料理店前。地震発生の一報で会食を切り上げた首相・安倍晋三は記者団にこう語ると、足早に官邸に向かい、地震の対応にあたった。
初動は的確だったが、16日未明の「本震」が発生するころから、安倍官邸の弛緩ぶりが露呈する。
本震を受け、安倍をはじめ続々と集まる官邸メンバーの中に官房副長官・萩生田光一の姿がなかった。就寝中で熊本の現地対策本部長の松本文明内閣府副大臣らからの電話に気づかなかったからだ。萩生田の秘書官も同様に朝まで官邸からの電話に気づくことはなかった。
現地にいた松本の言動も問題視された。「バナナでもおにぎりでもいいから差し入れをお願いできないか」。本震があった16日、政府と熊本県をつなぐテレビ会議で、自身への食糧を要求。さらには、「被災者に(物資が)行き届かないのはあんたらの責任だ。政府に文句は言うな」と地元職員を怒鳴りつけるなど評判は散々。官邸は慌てて本部長を内閣府政務官・酒井庸行に交代させた。
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source : 文藝春秋 2016年6月号