月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。ダブル選は「任期中改憲」日程を計算の上。二つの衆院補選が全てを握る
3月27日、東京・港区の品川プリンスホテルでは民進党の結党大会が開かれた。
「今日は歴史的な日だ。日本の将来が我々にかかっている。自由、共生、未来への責任。この三つの言葉を結党の理念として覚悟を持って新進党、いや民進党をスタートさせよう」
新党の代表となった岡田克也のあいさつの冒頭である。感情を表に出さない岡田にしては珍しく言葉に力がこもっていたが、緊張のせいか肝心の新党名を「新進党」と間違えた。1994年に結党した新進党には岡田も加わっていたが、その後は内紛を繰り返し、たった3年で解党している。新党の船出には、縁起悪い間違いだった。
この20年あまりの間、多くの政党が誕生し、そして消えてきた。その中でも、民主党と維新の党の合流による民進党の旗揚げは、最も熱気の乏しい部類に入るだろう。新党とはいえ、民主党から袂を分かった議員がよりを戻しただけという印象が強い。加えて合流の仕方や党名でもめ、二転三転したことで国民の期待も冷めていることは明らかだった。産経新聞とFNNが3月19、20の両日に行った世論調査では、民進党に期待すると答えた人はわずか27.6%だった。
「大変な事が起きました」
大まかな流れは2月初旬には決まっていた。民主党代表・岡田は2月3日夜、参院副議長・輿石東、元衆院議長・横路孝弘、前衆院副議長・赤松広隆らと非公式に会合を持った。岡田以外の出席者は党内リベラル派の重鎮。総じて新党結成には消極的だ。
この会合で岡田は、民主党を解党して新党をつくることはないと断言。代わりに新しい党名にこだわる維新の党の江田憲司らに配慮し「民主」という名を残しながら党名をマイナーチェンジすることはあるという考えを伝えた。これは重鎮たちがぎりぎり許容できる落とし所だった。この日の会合では、そうなった場合の有力候補として「立憲民主党」が上がった。
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source : 文藝春秋 2016年5月号