今年は5月に日本がG7の、9月に中国がG20の議長国を務め、オバマ米大統領が8年にわたる任期中最後の訪日、訪中をする予定である。その際、日米双方の対中政策のベクトルが合っているかどうか、が試されることになる。
現在、オバマ政権当初の対中宥和政策をめぐる日米間の対中ギャップは過去の物語である。南シナ海における中国の一方的な現状変更攻勢に対し、米国はリバランシング戦略で臨む姿勢に転換。その新局面の中で、過去2年間、尖閣諸島防衛をめぐって日米はしっかりスクラムを組んだ。
にもかかわらず日米間の対中認識と対中アプローチは、底流においてなおギャップがあるように見える。
・オバマ政権にとっては、現時点で最大の厄介な相手はロシアであって中国ではない。しかし、日本の外交・安全保障政策にとっては中国こそが「主要矛盾」である。安倍首相とオバマ大統領のプーチン評価の違い――安倍は「取引できる相手」と期待し、オバマは「スポイラー」と一蹴する――は対中認識の違いにも根ざしている。米国とても、長期的、戦略的には中国が最大のリスクであることは分かっているが、ウクライナとシリアでロシアにこけにされた屈辱があり、プーチンを叩かなければならない国内政治状況にある。
・米国政府部内には、南シナ海での中国の攻勢に対して、より強くかつ明確に軍事的対抗措置を講ずるべきだとする国防総省・太平洋軍(PACOM)司令部と地球環境やサイバーセキュリティーを含め全般的に対中関係を安定させようとするホワイトハウスとの間で温度差が存在する。
米国は気候変動のようなグローバル・イシューズで米中協力を深化させれば、それが他の地政学的挑戦の管理にも直接的にプラスに働くと期待してきたし、いまもケリー国務長官はそうした考え方を持っているようである。しかし、日本はこの両者をリンクさせたとしても地政学的領域での中国の行動を自制させることは難しいと懐疑的である。
安倍政権の対中アプローチは、国防総省・太平洋軍司令部アプローチと軌を一にしており、ホワイトハウスは、ペンタゴン・日本連合に包囲されていると感じている。米国のNSC(国家安全保障会議)と日本のNSS(国家安全保障局)がいま一つしっくりいかないのはそうした事情もある。
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source : 文藝春秋 2016年6月号