年賀状に「そろそろ如何でしょう」と一筆そえる

私が大切にしている10のこと

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映画のために今、できることは何か、いつも考えている

(1)挑戦を恐れない

 俳優という仕事を続けていくうえで大切にしているのは、挑戦を恐れないことです。今年、67歳になりますが、常に新しい自分を見せたい、発見したいと若いころから常に思ってきました。

 今年5月、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞をいただいた『PERFECT DAYS(パーフェクト デイズ)』という映画は、企画のスタートからとてもチャレンジングなものでした。

主演作『PERFECT DAYS』(ヴィム・ヴェンダース監督、12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー、配給:ビターズ・エンド) ©2023 MASTER MIND Ltd.

 一般的に、映画やドラマで俳優のもとに出演依頼が届くのは、台本や監督が決まったあとです。俳優は台本を読み、自分がその役にふさわしいか、あるいは監督との相性などを考えながら、出演するかどうかを判断します。しかしこの映画の場合は、台本もなく監督も決まっていない段階で出演オファーが来ました。

 それは、「THE TOKYO TOILET」という渋谷区の公衆トイレを美しく快適にしようというプロジェクトがあり、そこから派生した映像作品を作りたいというものでした。2020年にスタートしたこのプロジェクトには日本を代表する建築家やクリエイターが参加しています。現在、17の個性的なトイレが渋谷区のあちこちに建てられているのですが、建築家の坂茂さんがデザインした透明なガラスのトイレなどは、ニュースなどでも取り上げられたので、ご存知の方も多いかもしれません。

 プロデューサーの「渋谷におもしろいトイレがあるから日本に行ってみたいと海外から人が来るような映画を作りたい」という話を聞いて、とても興味深いし、ロマンチックな取り組みだなと思いました。俳優としてというより、自分自身の好奇心が刺激されたのです。

 また「きれいなトイレを作れば、使う人も自宅のトイレのようにきれいに使うのではないか」という社会実験的な目的もあるそうで、そういうプロジェクトに協力できることがあれば、ぜひやってみたいと思いました。

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source : 文藝春秋 2024年1月号

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